研究実績の概要 |
[内容] クッパー細胞(KC)が肝転移抑制に働く期間を検討するため, 腫瘍細胞投与とKCを除去する時期を変え, 肝転移結節数の変化を検討した. ラットのKCを腫瘍細胞投与2日前から腫瘍細胞投与7日後の異なるタイミングで除去する群に分け, 腫瘍細胞投与2週間後に肝臓を摘出して転移結節数を確認した. 腫瘍細胞を投与する前にKCを除去していた群と比較して, 腫瘍細胞を投与した後にKCを除去した群では著しく転移結節数が減少していた. ラット肝転移モデルにおいて, 腫瘍細胞の投与時にKCが転移を強力に抑制する働きがあることが考えられた. 生体蛍光顕微鏡観察において, KC存在下では腫瘍細胞はKCと同部位に膠着する傾向があり, その割合は時間と共に増加することが判明した. この現象を詳細に検討するため, 肝類洞内を電子顕微鏡で観察したところ, KCと腫瘍細胞の接触を認め,KCに貪食される腫瘍細胞が存在した. 生体蛍光顕微鏡でKCと同部位に存在した腫瘍細胞は, KCに膠着し貪食される腫瘍細胞を観察していたものであると考えられた. KCの貪食と活性化には相関があるため, 腫瘍細胞投与6時間後の肝臓のサイトカイン(TNF-α)を測定したところKCを除去した群と比較して, 正常群では有意に高値でありKCが活性化していることが明らかとなった。 [意義] KCを除去するタイミングを変えることで転移結節の形成に大きく影響を与える事が明らかとなった. KCは, 膠着した腫瘍細胞を貪食し, 類洞内膠着腫瘍細胞数を減少させるが, このKCの腫瘍に対する貪食は, 肝転移の抑制に極めて重要な働きを持つことが考えられた. KCの活性化を認め, 貪食との関連が示唆された. [重要性] KCと腫瘍細胞との相互作用が肝転移抑制に重要であり, この相互作用を促進することが効果的な肝転移の抑制につながるといえる.
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