研究課題/領域番号 |
25462079
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加藤 厚 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70344984)
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研究分担者 |
久保木 知 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50571410)
宮崎 勝 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70166156)
岡村 大樹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50375698)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝再生 / 門脈塞栓術 / 肝幹細胞 |
研究概要 |
脳死肝移植が行われるようになったが脳死移植症例数が少ない状況の中、生体肝移植が広く施行されている。しかしながら、容量不足にともなうドナーの不適合や肝移植後のsmall-for-sizeによる肝不全などが問題となっている。また、進行胆道癌などの根治切除を目的に拡大肝葉切除などの大量肝切除が必要な症例において、門脈塞栓術を行っても十分な残肝容積が確保ない症例がある。このような肝容積の不足にともなう手術適応の限界を解決する手段の一つとしての再生限界を超えた過大肝再生誘導に着目した。胆道癌に対する拡大肝葉切除後の肝再生の検討では、肝切除後に残肝は急速に再生増大するが、肝不全症例では肝再生の程度は遅延しており、また肝細胞機能障害、肝浮腫の指標としての肝CT値を測定すると、術後高ビリルビン血症および肝不全症例では有意にCT値の低下を認めていた。また、門脈塞栓術後の肝再生に伴う各種サイトカインの変動を検討すると、血清VEGFは塞栓術後5、7日目に有意に上昇しており、またTGF-betaは術後漸増し10、14日目で有意に上昇していた。7日目の血清VEGFが術後の非塞栓肝容積増加量と有意の相関を認めた。また、非塞栓肝容積増加量および増加率は、塞栓した肝容積、容積率と有意の相関を示した。VEGFおよびTGF-betaは門脈塞栓術後に有意な上昇を示し、肝再生促進とその制御において重要な役割を果たしていると考えられた。また塞栓した肝容積の多寡、肝予備能検査が非塞栓肝容積の増加に関連しており、個々の症例における肝再生予測と肝切除までの至適待機期間に有用な情報を提供できる可能性が示唆された。これらの結果をもとに、現在、ラットに甲状腺ホルモン投与およびVEGF投与による再生限界を超えた過大肝再生誘導ラットを作成し、その機序を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体による肝葉切除とのサイトカイン変動と肝再生および門脈塞栓術後の各種液性因子から見た肝再生促進機能の解明についての検討を終了し、ターゲット蛋白およびターゲット遺伝子についての解析を終了し、今後、in vivoの系において、各種ターゲット蛋白の解析を行う予定となっている。
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今後の研究の推進方策 |
ラットに甲状腺ホルモンおよびVEGFを投与することで、再生限界を超えた過大肝再生誘導ラットを作成し、その機序を検討する。肝再生の程度を肝重量により測定、さらにBrdUの取り込みとPCNAを用いた免疫染色法によりDNA合成能を解析するとともにKi67による免疫染色法によりcell cycleを検討する。過大肝再生においては、細胞合成とアポトーシスのバランスが重要と考えられ、アポトーシスアッセイを行い、過大肝再生時のアポトーシスの程度を定量化する。過大肝再生誘導のメカニズムを解明するため、肝再生因子であるIL-6、HGF、TNFαなどのサイトカインをreal time PCR法およびELISA法により検出する。また、肝再生抑制因子であるTGFβ、activinなどのTGFβ super familyの発現を同様に検討する。過大肝再生における転写因子活性を検討するため、NFkB、AP-1、STAT family,SMAD familyなどの転写因子の活性化とDNA結合能についてEMSA(Electropholesis Mobility Sift Assay)を用いて定量化すると共に、転写因子の局在証明のため、核分画および細胞質分画におけるwestern blotを施行する。マルチプレックス分析システム(Bio-PlexTM サスペンションアレイシステム)を用いてリン酸化シグナルの網羅的解析を行い、過大肝再生時におけるシグナル伝達の詳細を検討する。Bio-Plexはターゲットとなるタンパク質をビーズ表面に結合させた特異的モノクローナル抗体と反応させて、短時間に多数のサンプル測定を行うシステムで効率的なシグナル解析が可能となると考えている。
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