研究課題/領域番号 |
25462082
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伴 大輔 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40376736)
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研究分担者 |
田中 真二 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30253420)
三浦 智也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (30618111)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / EOB-MRI |
研究概要 |
Gd-EOB-DTPA造影剤によるMRI(EOB-MRI)は早期の血流動態を示すだけでなく、肝細胞に特異的に取り込まれる特性を持つため、肝臓における機能的造影剤として有用性がある。EOB-MRI肝細胞造影相の肝細胞癌の典型画像所見は、周囲肝実質より低信号の腫瘤像であるが、症例によって等信号・高信号を示す症例もみられる。この信号強度の違いが肝細胞癌の悪性度などの生物学的特徴を表現している可能性が考えられ、EOB-MRI肝細胞造影相が肝細胞癌の予後をしめすイメージバイオマーカーとなる可能性がある。本研究ではEOB-MRIで得られた画像所見と臨床病理学的特徴を解析し、その可能性について検討を行った。対象は2009年~2012年9月の当院に於ける肝細胞癌手術症例のうち、術前EOB-MRIを施行した72症例。Gd-EOB-DTPA投与後20分後を肝細胞相として、腫瘍内部の信号強度が背景肝実質と比較してROIの値が高いもの信号である場合をHigh群、腫瘍内部の信号強度が背景肝実質より低信号ある場合をLow群とした。腫瘍個数、腫瘍径(±1cm)をMatching criteria としたHigh群:Low群=1:2のMatchied Pair Analysisを行った。抽出されたHigh群は13例、Low群は26症例で、2群における臨床病理学的解析をおこなった。腫瘍の分化度はHigh群が高分化9例、低~中分化が4例に対し、Low群は高分化が6例、低~中分化が20例であった。High群では有意に高分化型肝細胞癌が多かった(odd比7.83, p=0.005)。門脈浸潤はHigh群で13例中1例(vp1: n=1)に対し、Low群は26例中12例(vp1: n=8, vp2: n=4)であり、HI群で門脈侵襲が有意に少ない傾向を認めた(odd比5.67 p=0.027 )。また予後の解析では、生存期間については有意な差が認められなかったものの、無再発生存期間についてはHigh群の再発率が有意に低いことがわかった(P=0.042)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基盤となるEOB-MRIを活用し、画像解析を用いた腫瘍の評価方法に関して様々な方法を試みたが、一定の評価方法を確立することができた。さらに臨床病理学的検討を行い、十分な研究成果と仮説を検証することができた。現在は切除標本から得られた献体を用いて、網羅的遺伝子解析を行い関連する遺伝子解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
網羅的遺伝子解析を行い関連する遺伝子解析から得られた所見でOrganic anion transportorの発現がEOB-MRIで高信号な腫瘍に亢進していることが明らかとなったので、実際の標本上で免疫染色を行い確認する。また他の腫瘍悪性度との関連遺伝子も明らかとなってきたため、それらを探索研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は肝細胞癌のEOB-MRI画像を中心に画像解析、および臨床病理学的な探索を行いデータベースを構築した。それらの解析は既存のシステムと装置を用いて行ったため、初年度の費用は予定より低くなった。また、免疫染色をはじめとする実験も中途であり、実験器材も今後必要となる見込みである。 次年度は初年度の画像解析の結果を得て、より精緻な画像解析を行うシステムを導入し検討することと、我々が保持している肝細胞癌切除検体からの網羅的遺伝子解析のデータベースから得られた知見を基にして画像情報から得られた結果と遺伝子発現の評価をするために基礎実験を行う予定である。
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