MCM(Minichromosome maintenance)はDNA複製ヘリカーゼでMCM2-7の6つのisoformから構成されているが、MCM6はそのisoformのひとつである。MCMは各種の癌で発現上昇が報告されているが、肝細胞癌で発現の報告はされていない。今回、DNAマイクロアレイデータにより、肝細胞癌における新たな門脈浸潤関連分子としてMCM6を同定したため、HCCにおけるMCM6発現について検討した。 平成25年度は当科で切除されたHCC 55例についてRT-PCR法を用いて癌部と非癌部におけるMCM6 mRNAの発現量を解析した。またHCC118例に対し免疫染色を行い、癌部でのMCM6の発現率から高発現群と低発現群にわけ、2群における門脈浸潤等の臨床病理学因子と予後について検討した。その結果MCM6のmRNAは非癌部に比して癌部で有意に発現上昇しており、門脈浸潤陽性HCCで発現が亢進している傾向であった。また免疫染色ではHCCのうち、MCM6タンパク高発現群は低発現群に比して門脈浸潤陽性が多く、全生存期間が不良であった。 平成26年度はHCCの細胞株を用いて機能解析を行った。MCM6高発現株HepG2のsiRNAによるノックダウンを行い、細胞増殖の低下を認めた。またノックダウン株の細胞周期解析ではG2/M arrestを来していた。 平成27年度は引き続きMCM6ノックダウン株における浸潤能を検討する目的でinvasion assayを行ったが、数種類の細胞株ともにノックダウンで浸潤能の低下を証明することは出来なかった。またMCM familyであるMCM2を免疫染色にて発現解析したが、HCC114例の検討ではMCM2タンパク発現と臨床病理学因子との間には有意差を認めなかった。 MCM6発現は門脈浸潤と切除後予後に関与しており、HCV陽性HCC切除後の新たな予後予測マーカーおよび治療ターゲットとなりうる可能性が示唆された。
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