研究課題/領域番号 |
25462096
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤星 朋比古 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20336019)
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研究分担者 |
村田 正治 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30304744)
富川 盛雅 九州大学, 大学病院, その他 (60325454)
橋爪 誠 九州大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90198664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝硬変 / 脂肪由来間葉系幹細胞 / 門脈圧亢進症 / 肝増殖因子 |
研究概要 |
研究課題1:<脂肪由来幹細胞の肝不全、肝硬変の新しい治療法の確立のための基礎的検討>方法:脂肪由来間葉系幹細胞(adipose derived mesenchymal stem cell:MSC)の肝硬変ラットにおける治療効果とその機序における検討を 四塩化炭素による肝硬変ラットにおいて検討した。MSCを蛍光色素PKH26で標識したADSCを尾静脈より5000万個投与した群(n=8) と生食のみ投与した群(n=8)で3日目、7日目にそれぞれ犠牲死させ、肝臓組織への投与細胞の生着と肝星細胞の活性化をα-SMA 蛋白をWestern blot analysisで検討した。また肝障害について肝逸脱酵素であるAST,ALTにて評価した。また肝障害軽減の機序としてADSCのもつHGF産生能について検討した。 (結果): ADSC投与ラットにおいては標識された細胞を3日目、7日目の肝臓組織に認め、それらの細胞は、肝線維化の部分と肝内血管周囲組織に認められた。In vivo imaging では正常肝では、標識ADSCを認めなかったが、障害肝には標識細胞が顕著であった。αSMAの発現に関しては、ADSC投与群ではその発現が低下している傾向を認め、肝組織において線維組織の改善を認め、肝硬変の改善を認めた。また、ADSC投与ラットでは、非投与ラットに比べ、ASTおよびALTは低値であった。肝線維化改善だけでなく、肝障害そのものをADSCは軽減する可能性がある。次に、上記の検討から、線維化改善の機序としてADSCの肝星細胞への影響について共培養システムにて検討した。ADSCとの共培養により、肝細胞(primary culture) の増殖能は高くなり、一方で星細胞の活性化は抑制され、増殖は抑制された。機序としてADSCが発現する肝細胞増殖因子(HGF)の作用が予想された。共培養でのADSCではRT-PCRにてHGFmRNAの高発現を認め、免疫染色にても蛋白レベルで強発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度において計画していた肝硬変モデルにおける脂肪由来間葉系幹細胞の治療効果については、再現性を認め、他の文献とも整合性の得られる結果を得た。ヒト脂肪由来幹細胞については倫理委員会の申請中であり、当初の予定よりも倫理委員会の承認が送れている。 しかしながら、基礎実験においては、肝機能障害、肝線維化改善の機序としてHGFが強く関係していることが分かった。このことは、大きな進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト脂肪由来幹細胞の研究の倫理審査を受け、ヒト皮下脂肪由来幹細胞の基礎的研究も行ってゆく。また、現在すすめている、当研究グループで運営しているCPCのヒト幹指針での承認をうけることを本年度の目標としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト皮下脂肪由来幹細胞を使用した、基礎的検討および、最終的には臨床での介入研究を予定している。平成25年度においてヒト由来細胞を研究およびヒト臨床に応用するまでには至らなかった。そこで計画を変更し、平成26年度はヒト臨床における研究を推進予定とし、未使用額が生じた。特にヒト細胞を培養する無血清培地は高価であり、ある程度の費用が必要である。 平成26年度の上半期において費用の大部分は、細胞品質をチェックするためのエンドトキシン検査(外注)等に支払われる予定である。 また、本研究における成果は、国際学会にて発表してゆき日本のこの分野における優位性を確立する。
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