研究課題
目的は脂肪組織由来幹細胞(ADMSC)の移植による新たな代謝性肝疾患治療法を確立することである。動物実験系を用いて、ADMSCから分化誘導したhepatocyte様細胞をレシピエント肝に移植し、さらに増殖刺激を加えることにより、増殖を促し、特に代謝性肝疾患に対する細胞療法の有用性を検討する。方法と結果;ドナー;DPP4陽性ラット、レシピエント;DPP4陰性ラット。1. レシピエントラットの前処置として、門脈枝結紮により肝細胞増殖刺激を与えると共に、部分肝X線照射を行いレシピエント肝細胞の増殖能を抑制した。2. ドナーラットより分離した、①成熟肝細胞、②小型肝細胞(肝細胞の前駆細胞)、③新鮮ADMSC(腹腔内脂肪組織由来)を、上記前処置を加えたレシピエントラットの脾臓内へ移植した。全てのレシピエントラットは研究期間中生存した。2カ月後に犠牲死させ、肝臓を摘出し、移植細胞を判別するためにDPP4染色を行った。①②では移植細胞によるレシピエント肝細胞の置換を認めた(②>①)。③では移植細胞はレシピエント肝に散在するのみであった。移植前に、ADSMCをin vitroでhepatocyte様細胞への分化を試みたが、十分な分化を得られなかった。考察;成熟肝細胞や小型肝細胞は、選択的に増殖刺激を受けることにより、効率良くレシピエント肝内で増殖可能であり、将来の細胞療法の細胞源として有用であると考えられた。ADSMCに関しては、十分なhepatocyte様細胞への分化誘導は困難であり、肝疾患に対する細胞療法への応用は困難であると考えられた。
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Cell Transplantation
巻: 25 ページ: 549, 558
10.3727/096368915X688669.