研究課題/領域番号 |
25462099
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
新田 英利 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90555749)
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研究分担者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20240905)
中原 修 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40583042)
別府 透 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (70301372)
高森 啓史 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (90363514)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | C5aR / 浸潤、転移 |
研究概要 |
これまでの研究で胆管癌においてC5aR発現癌細胞はC5aに反応することでMMP産生を亢進させ、かつ細胞運動を活性化させることで転移、浸潤に寄与していることが明らかであった。今回の研究目的は臨床検体におけるC5aRの発現を検討し、それが予後因子となるか否かを検討することであり、熊本大学消化器外科で2004年~2008年において胃癌の診断で切除術を受けた133例について抗C5aR抗体を用いて免疫化学組織染色を施行した。結果、C5aR高発現群(28%)は低発現群に比較し、無再発生存、累積全生存ともに有意に不良であった。C5aR高発現胃癌は癌の局在(上部)、深達度、stage、脈管侵襲陽性と有意な相関を認めた。またC5aR高発現群は経過中に肝転移が有意に多かったことから、C5aRは胃癌において血行性転移に関わっていることが示唆された。今後は胃癌肝転移巣でのC5aR発現を多数例集積し、免疫組織染色を行い肝転移との関連を評価する予定である。また大腸癌の切除標本111例(熊本大学消化器外科にて2003年~2007年に切除)を対象に免疫化学組織染色でC5aRの発現を検討した。結果、C5aR高発現(39%)、低発現においては両群間に有意差はなかったが、脈管侵襲に関してはC5aR高発現群の方が有意に陽性例が多かった。以上のことから癌腫を越えてC5aRは癌の血行性転移に関与している可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床検体の収集に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌の臨床検体においてC5aRが予後と相関することがわかった。今後は胃癌の細胞株を用いてC5aRの発現を行い、C5aによる浸潤効果、細胞遊走活性、MMP産生能について検証する。また以前の研究結果からC5aR発現胆管癌細胞株やC5aRcDNAを遺伝子導入して作成したC5aR高発現癌細胞はC5a投与によりアクチンの重合が誘導され、細胞のscatteringを示し、24時間以上経過すると線維芽細胞様の形態変化を示す細胞も認めた。このような細胞形態の変化、細胞の散在化は癌におけるepithelial mescenchimal transition(EMT)でおこる細胞形態変化と酷似しているため、細胞運動の活発化に加えEMTが起こっている可能性がある。また他の浸潤促進形式としてepithelial mesenchymal transition(EMT)が関与している可能性がある。各C5aR発現細胞株に対しC5aR-agonistを作用させた際のE-carherinの変化、さらにはsmad2/3のリン酸化、vimentin、CD44の発現の変化をwestern blotで確認。si-RNAでC5aRをknockdownした際の変化、あるいはC5aR-antagonist(W-54011)のEMT抑制効果についても検討する。 Tumor stromal interactionにおけるC5aRの関与として、肝stellate cellはC5aR発現を有し、C5aにより活性化され、αSMA発現やヒアルロン酸の産生を促進することで肝の線維化を誘導する(Immunology 2013,Xu R et al.)報告がある。そこでC5aで活性化されたstellate cellが癌細胞に与える影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の想定より、研究の進捗が遅れたため。 研究試薬等の消耗品費、データ管理、関係資料の作成等を行ってもらうための人件費に充てる。
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