抗がん剤治療による副作用としてのsinusoidal obstruction syndrome (SOS)に対して、近年、治療薬としてdefibrotide (DF)がヨーロッパで承認された。しかし、DFの正確な作用メカニズムは不明である。いずれにしてもDFは血管内皮保護作用を直接にあるいは間接的に有していると考えられる。 本研究では、ジヌソイド内皮細胞 (SEC) と DF の相互作用を調査することを目的とした。ヒトジヌソイド内皮細胞を、各種濃度のDFと作用させ、共焦点顕微鏡とflow cytometry を利用して、DF-SEC 相互作用、endocytic pathways、internalization kineticsを検討した。 共焦点顕微鏡による調査で、DFとSEC 膜との相互作用は主に、SEC膜表面で起こり、その後、SEC内部に取り込まれる形となった。しかし、細胞核に到達しなかった。フローサイトメトリーでは、SECのDF取り込みは、濃度、温度、および時間依存であることも示された。さらに、阻害アッセイはマクロピノサイトーシスを通じて主に SEC 膜に DF のentranceが発生することを示した。そしてDF の抗炎症作用、抗酸化特性は細胞膜と薬物の相互作用によって引き起こされると考えられた。今回の結果は、DFの、ジヌソイド内皮細胞障害に対する治療、予防薬としての作用メカニズム解明の一助となると考えられた。
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