研究課題
本研究の目的は、内科的治療が困難な難治性疼痛を主訴とする慢性膵炎に対して、外科的な根治治療である膵切除を行い、その際、自己のラ氏島細胞を取り出し、そのまま患者に戻す自家膵島移植技術を併用することにより、膵内分泌機能を可能な限り温存する治療を本邦でも臨床応用し、治療成績を向上させることにある。本研究の最終的な目的である慢性膵炎臨床症例における自家膵島移植の実施に関しては実現が困難であった。しかしながら、ミニブタを用いた大動物実験において以下の重要な成果が得られた。1)大動物を用いた自家膵島移植モデルの確立。ミニブタを用いた自家膵島移植モデルを確立し、臨床での実際の膵島移植を前提とした実験が可能であった。具体的に、膵臓摘出、膵島分離、膵島移植の一連の移植手技を確立し、通常の自家膵島移植モデルにおいては100%の生存と、インスリン分泌を確認することが可能であった。2)GLP-1による膵島生着促進効果の検証近年、消化管ホルモンのインクレチンの一種であるGlucagn-like peptide-1(GLP-1)が新たな2型糖尿病の治療薬として出現し、そのインスリン分泌促進、食欲低下作用などのほか、膵島細胞の分化増殖促進作用があるといわれているが詳細はいまだ不明である。GLP-1の自家膵島移植細胞に対する効果について、移植膵島の再生、増殖促進作用の面からGLP-1投与モデルを作成し検討した。その結果、GLP-1による膵島細胞の生着促進効果、並びにブドウ糖負荷試験におけるインスリン分泌能の改善が得られた。今後、自家膵島移植の臨床研究への展開を計画している。
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