研究課題
難治性固形癌の一つである膵癌に対する集学的治療の一つとして免疫細胞療法が行われ、一定の成績は得られているものの未だ満足できる成績ではない。申請者らは自然免疫逃避機構に関与するMICA/B(MHC classⅠrelated chain A/B)発現の低下および可溶性MICA/Bの出現に着目し、腫瘍細胞上でのMICA/B発現の増強および可溶性MICA/Bの抑制を介した新たな膵癌に対する集学的治療法の開発を目的として研究を計画した。まず切除標本を用いてGemcitabine(GEM)による術前化学療法症例でのMICAの増強効果を検討した。次に膵癌細胞株を用いてGEMおよびValpronic acid(VPA)によるMICA/B発現増強効果および可溶性MICA/Bに対する抑制効果を検討した。最終年である当該年度は症例数を追加し、また膵癌細胞株での可溶性MICA/Bの影響を検討した。術前化学療法(GEM+S-1)(NAC)群と術前化学療法非施行群(Cont)群に分けて検討すると、NAC群ではCont群に比べて癌細胞膜上でのMICAの発現および腫瘍周囲のCD16陽性リンパ球の浸潤度が有意に高率で、NACにより免疫担当細胞の誘導が認められた。また膵癌細胞株では低濃度GEMにVPAを付加することにより、細胞上のMICA/Bの発現がさらに増強し、γδT細胞傷害活性の向上が認められた。また可溶性MICA/Bの減少も認められ、GEM+VPA併用療法は腫瘍免疫逃避機構を解除する一翼を担う可能性が示唆された。
すべて 2015
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Clinical and Experimental Medicine
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10.1007/s10238-015-0394-x