研究課題
2005年以後、UICCーT3、T4の局所進行膵癌に対して、gemcitabine(GEM)を用いた化学放射線療法(GEM-CRT)を130例以上に、2011年以後は膵癌に対するSー1の効果が明らかとなったため、GEM/S-1 CRTを120例以上に施行している。GEM-CRT症例においては、EUS-FNAB検体を用いた免疫組織染色にてhENT1発現を検討し得た51例を対象に、治療前のhENT1発現と治療効果との関係を検討したところ、hENT1陽性の切除例は、生存期間中央値(MST)が30ヶ月以上と著明な延長を示していたのに対して、hEENT1陰性の切除例では約9ヶ月のMSTであり、この成績を発表した(Pancreas. 2016 45: 761-71)。また2015年までの膵癌272例のうち、局所進行切除不能膵癌(locally advanced unresectable PDAC)110例についてCRTの組織学的効果(high responderとlow responder)と、がん幹細胞ニッチにおける細胞外基質であるテネイシンC(TNC)の腫瘍内発現程度との関連性について検討した。110例のうち51例は化学療法をGEMのみ、59例はGEMとS1を使用していた。11例のうち45例に膵切除が行われたが、R0切除率はhigh responder 88% lowresponder 51%と、CRT後の組織学的効果を反映していた。TNC陽性の頻度はhigh responder 22% low responder 63%と、low resonderほど高率であった。TNC陰性症例は3年生存率が27ヶ月であり、TNC陽性症例の8ヶ月に比べて有意に延長していた。すなわち、TNCはCRTの治療抵抗性を示す一つの指標となり得ると考えられた。このように、細胞外マトリックスの一つであるTNCが、癌幹細胞の根幹となっている可能性は示唆されており、TNCノックアウトマウスにてさらなる癌幹細胞維持機能ニッチの解明に挑んでいたが、それらを証明するに至っていない。
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