研究課題
肝外胆管の手術、胆管損傷の修復において、安易に胆管-腸吻合が行わるが、この吻合では、本来のVater乳頭部機能が廃絶され、少なからず逆行性胆管炎が起こる。さらには、慢性炎症から高頻度の胆管癌が発生が報告されている。それ故、この吻合法は理想的ではなく、近未来には乳頭部を温存する治療法が求められる。我々は、これらの胆管-腸吻合を可能な限り回避する治療法を目指し、Vater乳頭部を温存しつつ、胆管病変切除部、損傷部に新しい胆管を再生させる治療法を開発した。(生体吸収性材料による胆管再生)胆管を再生させる生体吸収性材料は、乳酸:カプロラクトン50:50の共重合体で、生体内で、約6-8週で吸収される。この生体吸収性ポリマー(BAP)チューブ(人工胆管)を胆管欠損部に移植し、この移植部にどのように胆管が再生するか検討してきた。現在までに、1)全周性ではない損傷に対し、BAPパッチの利用が可能(Surgery 2010)、2)全周性の小範囲の損傷に対し、BAPチューブ(人工胆管)の置換が可能 (J Gastrointest Surg 2012)、3)全周性の広範囲の損傷に対し、人工胆管の置換が可能 (Am J Transplant 2005)、4)Vater乳頭部をこの人工胆管を利用して短期的には再生可能(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2010)、5)黄疸の有る状態でも人工胆管にて胆管再生が可能(Int Surg 2015)、等、大動物実験においては期待のもてる成績を得ており、近い将来、臨床応用可能と考えている。(今後の展望)現時点においては、このような生体内で吸収される材料の新規使用を検討する臨床研究、臨床応用には問題点が多い。しかし、近未来にはこのような材料が使用可能となり、胆道外科領域における真の意味での低侵襲、機能温存が達成されることを期待している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
InternationalSurgery
巻: 100 ページ: 1408
帝京医学雑誌
巻: 39 ページ: 129