研究課題
【研究目的】膵癌手術症例、術後転移再発症例、切除不能症例を含めた膵癌患者の血液より新規膵癌末梢循環腫瘍細胞(Circulating tumor cell: CTC)検出システムであるテロメスキャンを用いてviable pancreatic CTCを検出し、臨床経過および予後とCTC検出の意義を解析することを目的とする。【研究方法】手術症例においては術前(術前化学放射線療法の前・後)、退院時の計3回、切除不能症例、転移再発症例では抗癌剤治療など治療開始前および投与終了後1ヵ月の計2回の採血を膵がん患者に行い、テロメスキャンシステムを用いたviable pancreatic CTCの検出を行い、腫瘍マーカーの推移などの臨床経過、予後とCTC検出数の変化と合わせて解析しCTC発現の意義を検証する。【結果】当初、OBP401というアデノウイルスを用いてCTC検出を行ったが、癌細胞に対する精度、特異性を向上させるべくテロメスキャンF35という新規開発したアデノウイルスを用いてCTCの検出を行った。ウイルスをF35に変更することで、非特異的GFP陽性細胞の検出数は格段に減少した。CTC検出を行った20例中9例でviable pancreatic CTCを検出した。CTC陽性患者9例のうち4例で肝転移、リンパ節再発を認め、2例は早期死亡した。現在、中長期での予後をフォロー中である。さらに検出されたCTCの免疫染色の結果、vimentin-cytokeratin double positiveのCTCを検出でき、予後も極めて不良であることが判明した。【結語】テロメスキャンを用いた新規膵癌末梢循環腫瘍細胞)検出システムによりCTC陽性と判定された膵癌患者の予後は極めて不良であり、viable pancreatic CTC検出は有用な予後予測因子である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に従っておおむね順調に研究は進行できた。今後、臨床データーとつきあわせて中長期での予後予測因子となるか、さらには術後補助療法の有効性判定に応用できるかを解析する。
膵癌患者においてviable pancreatic CTCの出現はきわめて予後不良であることが本研究成果により明らかとなった。したがって、以下の研究推進によりCTCの新しい知見を深めることは、膵癌の治療抵抗性の打破につながるものと確信している。膵癌原発巣由来tumor lysateおよび増殖能を有するCTC両者をα1,3GT酵素を用いて-galエピトープを酵素学的に生合成しα-gal pancreatic tumor lysateおよびα-gal CTCを作成する。これらをhigh Anti-Gal K.O. miceに各々投与しanti- pancreatic tumor lysate抗体、anti-CTC抗体をマウス血清中に誘導する。膵癌原発巣およびCTC由来糖タンパク質をそれぞれ二次元電気泳動で展開・分離し、上記の免疫マウスの血清を用いてWestern blottingを行う。それぞれのblotting signalsを比較し、膵癌原発巣およびCTC由来糖タンパク質の中で両方の血清で増強したスポット、さらにanti-CTC抗体を含むマウス血清でのみ増強するスポットを確認し、その注目スポットに相当する部位のゲルを切り出しマススペクトロメトリーで解析し新しいCTC標的タンパクの同定を行う。
当初計画よりも少ない予算で進行したため。物品等の購入。
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