研究実績の概要 |
超薄型ePTFE membraneを用いたfan-shaped valve(3弁尖)を縫着したbulging sinusを有するePTFE導管を作成し、倫理審査委員会の承認の下、右室流出路再建術での臨床使用を行った。対象患者は94例。手術時年齢は4.6±5.3歳。術式はRoss手術8例、Rastelli手術86例であった。使用導管径は16.4±4.0 mmであった。0.1mm(通常厚)ePTFE membraneを用いた54例(5.2±5.3歳、導管径16.7±4.1mm、Ross手術13例、Rastelli手術41例)を対照群とした。両群間の臨床成績に差は認めなかった. 圧較差は薄型群15.3±9.8mmHg、対照群22.3±14.9mmHg(p=0.0052)と薄型弁では有意に圧較差軽減効果が得られた。特にRastelli手術例では、薄型群16.2±9.8mmHg、対照群25.0±15.0mmHg(p=0.0021)と軽減効果が顕著であった。大口径(18mm以上)導管では薄型群13.2±8.6mmHg、対照群19.2±16.0mmHg(ns)と有意差が認められなかったが、小口径(16mm以下)導管では薄型群16.3±10.4mmHg、対照群22.6±13.7mmHg(p=0.03)と有意に圧較差軽減効果が認められた。超薄型ePTFE membraneを用いた弁尖は弁口径が小さいほど有効に狭窄の予防効果を発揮するものと考えられた。 肺動脈逆流は、全症例では両群に有意な差を認めなかった。口径別の検討(8-14mm、16-20mm、22-24mm)では大口径(22, 24mm)導管において薄型群で有意に逆流が増加した(p=0.0017)。超薄型ePTFE membrane弁尖は大口径導管での逆流制御にはやや不利に作用した。
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