研究課題/領域番号 |
25462142
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
谷口 繁樹 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90183467)
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研究分担者 |
内藤 洋 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00316069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 再生医療 / ES細胞 / 心筋細胞 |
研究概要 |
研究概要:コラーゲンゲル内の三次元培養で未分化なES細胞を心筋細胞へ分化誘導することが可能であるかどうかについて検討した。 実験方法:未分化なマウスES細胞をLIF存在下に培養し、未分化状態を維持したまま継代した。一定数へ細胞を増殖させた後、細胞をトリプシンで単離し以下の条件で培養した。 群分け:コラーゲンゲル内での三次元培養(検討群)、ハンギングドロップ法(陽性対象群)、培養皿上での二次元培養(陰性対象群) 評価方法:①位相差顕微鏡像による細胞凝集塊の観察。②DNA量の定量による細胞数変化の観察。③リアルタイムRT-PCRによる心筋特異遺伝子(Nkx2.5、α-MHC、cardiac troponin T)の半定量。④リアルタイムRT-PCRによる未分化性(OCT3/4、Nanog)。 結果:位相差顕微鏡による観察で、播種当日、細胞は単離された状態でコラーゲンゲル内に包埋されていた。培養3日目には細胞が凝集塊を形成し、培養6日目にはその大きさが増大することが確認された。培養9日目でもその大きさは維持されていた。細胞数は位相差顕微鏡像の観察による印象と同様で、培養6日目まで急激な増大を示し、培養9日目にかけては緩徐な増大を示した。心筋特異遺伝子の発現は陰性対象群では殆ど認めなかった。一方、検討群では陽性対象群よりは低値ではあったが、心筋特異遺伝子の発現を認めた。未分化性に関する遺伝子の発現は3群全てで培養と共に低下した。 上記より、コラーゲンゲル内での三次元培養で未分化なES細胞を心筋細胞へ分化誘導することが可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲンゲル内での三次元培養によるES細胞の心筋細胞への分化誘導の可能性についての検討を行った。リアルタイムRT-PCR法による検討でコラーゲンゲルでの三次元培養で心筋細胞に特異的な遺伝子の発現が確認された。発現の定量ではES細胞の心筋細胞への分化に従来用いられてきたハンギングドロップ法よりは低い値であったが、二次元培養で殆ど発現を認めなかったことから、三次元培養は有用な培養方法であると考えられた。 以上の結果により、概ね予定していた実験計画を達成できていると考えているが、今後は条件の最適化でより高い心筋細胞への分化の効率を得ることを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
まず、蛋白レベルでの心筋細胞への分化の確認を行う。 免疫染色を行い、培養のどの段階で心筋細胞に特異的な蛋白が確認できるかを検討する。同時に、ウェスタンブロットで半定量的に心筋細胞への分化の割合をハンギングドロップ法と比較検討する。 また、コラーゲンゲルの濃度や播種する細胞数についても、高い効率で心筋細胞への分化が得られる培養条件を検討し、最適な培養条件を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本来なら分化誘導についての最適条件の決定までを本年に行う予定であった。しかし、細胞数の変化、細胞の未分化性についての検討などを行ったため、最適条件の決定を次年度に延期した。大量のサンプル作成が必要である最適条件の決定を次年度に延期したため、本年度は研究費の使用が少なくなった。 最適な培養条件の決定には大量のサンプルの作成、そのサンプルの発現する遺伝子、蛋白などの測定が必要である。従って大部分の研究費は消耗品に使用する予定である。 なお、予定している実験に必要な機器類は既に所有している為、現在のところ大型機器を購入する予定はない。
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