研究概要:コラーゲンゲル内での三次元培養で未分化なES細胞を心筋細胞へ分化誘導するための添加する薬剤による分化効率の向上の可能性について検討した。コラーゲンゲル内での三次元培養による心筋細胞へ分化誘導について、長期間の培養における利点について検討した。 実験方法:これまでの報告でビタミンCの添加によって細胞からのコラーゲンの分泌が上昇し、それに伴い幹細胞の心筋細胞への分化が誘導されるとされているため、ビタミンCの添加、及び、コラーゲンの合成阻害剤であるアゼチジン2-カルボン酸の添加の心筋細胞への分化効率への影響について検討を行った。また、一般的に用いられるハンギングドロップでは、一定期間の培養の後、二次元培養で培養を継続する必要性があるが、二次元培養では心筋細胞以外の細胞の過剰な増殖が心筋細胞の生存に影響する可能性が考えられる。その点を考慮し、二次元培養を必要としないコラーゲンゲル内での三次元培養の上記に対する利点についての検討を行った。 群分け:添加物なし、A2P(ビタミンC)の添加、AzC(コラーゲン合成阻害剤であるアゼチジン2-カルボン酸)の添加 結果:三次元培養、二次元培養、ハンギングドロップともにビタミンCによる心筋細胞への分化誘導は有意な差を持って高かった。また、その効果はAzCによって二次元培養、ハンギングドロップにおいて特に大きく拮抗された。三次元培養でも拮抗されたが、その度合いは小さかった。長期間の培養による心筋細胞分化への影響については、ハンギングドロップと比較した。ハンギングドロップでは培養6日目に二次元培養に移行した後、急激な細胞数の増加を認め、それに伴い、心筋特異遺伝子の発現の相対的な低下を認めた。一方、コラーゲンゲル内での三次元培養では細胞数の増加は培養期間を通して緩徐であり、培養の継続による心筋特異遺伝子の発現の相対的な低下は認めなかった。
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