研究課題/領域番号 |
25462145
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岡 徳彦 北里大学, 医学部, 講師 (20328420)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 先天性大動脈疾患 / 数値流体シミュレーション / 画像診断 / 血流可視化 / 心機能 |
研究概要 |
左心低形成、Norwood手術に関して大動脈の血流解析を行った。 超音波血流可視化ソフトウェアVFMを用いて一例の大動脈再建術前後で血流を可視化した。大動脈渦流のパターン、壁ずり応力のパターンは超音波計測とCFD血流解析結果は一致し、我々の計算方法が妥当であることが示された。 一方2次元計測である超音波ではVFMに2次元流れの仮定を含んでいるためその妥当性を検証しなければならないが、我々のCFD解析結果で断面を再現し、2次元仮定を検証したところ約10から20パーセントの誤差で2次元仮定の正当性が立証された。 また、4D MRIとのvalidationを行い、各pixelごとに3次元ベクトルを計算値と計測値を比較し、有意な相関を有することを確認した。 これらを基に臨床研究を行った。大動脈手術で再手術を必要とされた患者たちは高いエネルギー損失を有し、高いwall shear stressを有していた。これらの値と単心室心筋機能との相関を確認したところ、cardiac outputやejection fractionとの相関はほとんどなく、等容拡張期の時定数tauと高い相関を有し、高いエネルギー損失は後負荷にかかわっていることが確認された。 このことに基づき、現在大動脈再建術の再手術の適応を検討している。これまでの18例の大動脈解析のうち再手術例5例を検討し、wall shear stressのpeak値が60 Pa以上の症例では再手術が合理的に血流動態を改善していることが立証された。一方で大動脈弁と肺動脈弁が前後関係にあるTGA typeの大動脈再建症例などでは必ずしも再手術がwall shear stressを軽減するうえで有効とは限らず、3次元CGを用いた仮想手術シミュレーションによってエネルギー損失とwall shear stressの軽減の程度を評価することに成功した。今後仮想シミュレーションを含めた臨床上のエビデンスを構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定としては初年度は計算手法の確立とその評価に時間を使う予定であった。 心臓超音波、心臓MRIによる評価を予定していたが、予想に反して早期にデータの採取が可能であり、またMRIは2次元計測のみならず3次元計測が可能でありより精密なvalidationを行うことが可能であった。 さらに全国の他施設からの協力もあり、予想以上に多くの臨床データを解析を行うことが可能であった。来年度以降に予定していた心機能との相関関係の解明、仮想手術シミュレーションに本年度中に取り組むことができ、計画の進展は今年度は良好であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析方法の検証に関してまず論文に投稿することを予定している。 投稿予定内容としてはMRIとCFDの血流解析の評価に関して、 超音波とCFDの血流解析の評価に関して、仮想手術シミュレーションの妥当性に関してと3本の投稿を予定している。 そのうえで解析症例を年間10例程度行い、目標症例30例に到達した時点で統計解析を行い、血流が心機能に与える影響に関して解明を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の差額はほとんど生じず、計画的な執行ができた。 来年度以降は多くの症例のデータを基に統計解析を行わなければならず、統計処理ソフトウェアを中心に予算を割り振る予定である。
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