本研究は心房間伝導路に対して外科的アブレーションを行うことで、心房細動時の伝導調整および心房細動の抑制効果が得られることが仮説となっているが、これまでの研究結果では心外膜面からアブレーションが可能である伝導路であるBachmann束の焼灼で、この効果が明らかとなっている。平成27年は26年同様、アセチルコリン負荷を行い、不応期短縮モデルを作成。心房ペーシング部位またペーシング周期で優先伝導路の変化が生じないことを確認した。Bachmann束、冠静脈洞に対して双極高周波アブレーションデバイスによるfocal ablation前後で心房の全興奮伝播時間の測定および心房細動を誘発したところ、心房細動持続時間はBachmann束へのアブレーション前後で有意に短縮が得られ、マッピング所見からもBachmann束の中でも右房付着部へのアブレーションが不応期短縮時、高頻度刺激時や心房細動時に心房間伝導の遮断する至適部位と考えられた。この際、アブレーション前後での洞調律時または右房ペーシング時の全心房興奮時間に変化はなく、中隔伝導路または冠静脈洞を介して心房間伝導が調整されていた。人工心肺を用いた心内膜電位はBachmann束と中隔伝導路を明確に区別できるほどの情報はなかった。Ablation前後の伝導興奮パターンおよび心房細動時のBachmann束および冠静脈洞での局所電位のdominant frequencyの解析からBachmann束のアブレーションは心房細動時の主要な伝導路を遮断するフィルタリング効果により心房細動を予防することが示唆された。
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