研究課題
我々は、冠動脈バイパス手術において糖尿病がグラフトれん縮増大の大きなリスクファクターであることを明らかとしてきた。グラフトとして用いられるヒト伏在静脈において、アンギオテンシンII誘発性血管収縮反応がセロトニン誘発性血管収縮反応と同様に糖尿病患者群で有意に増強していることを見出した。糖尿病群におけるアンギオテンシンII誘発性血管収縮反応の増強効果は、セロトニン誘発性血管収縮反応の増強効果よりも明らかに高いものであった。静止張力状態における糖尿病群の伏在静脈細胞膜のアンジオテンシンⅡ受容体(AT1受容体)蛋白は有意に増加していたが、セロトニン2A (5-HT2A)受容体蛋白量は、糖尿病群および非糖尿病群において有意な差は見出されなかった。従って、H26年度に行ったセロトニン受容体インターナリゼーション効果の検出ができなかったことに矛盾がない結果となった。一方で、糖尿病群において観察されたヒト伏在静脈でのアンギオテンシンII誘発性血管収縮反応の増強効果には、アンジオテンシンⅡ受容体(AT1受容体)のタンパク量の増加が関係していることが明らかとなった。この結果は、異なる血管収縮物質に対して糖尿病が及ぼす収縮反応増強メカニズムに明らかな相違があることを証明している。さらに、ヒト内胸動脈を用いた実験では、ヒト伏在静脈を用いた実験結果と異なり、糖尿病群では、セロトニン2A (5-HT2A)受容体蛋白量が増加していることを見いだした。従って、糖尿病は、血管部位そして各種血管収縮物質それぞれに対して複雑な影響を与えることが明白となり、個別に対応する必要があることが示された。
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Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 6 ページ: 82-87
http://dx.doi.org/10.1016/j.bbrep.2016.03.008