研究課題
口腔内細菌が動脈瘤形成・拡大に関与するという仮説のもとに,発病様式機序の一端を明らかにし,心臓血管病の予防に貢献することを目的として行っている研究である.研究の特色としては,生きた口腔内細菌が動脈瘤壁に存在するかを示し,口腔内細菌が動脈瘤形成・拡大に直接的に,かつ深く関係していることを明らかにすることにある.当初は大動脈瘤壁検体を長期の嫌気培養ののち,PCRにて16SrRNAの増幅を検出する方法を試みた.この結果,歯周病菌の検出は無く,Staphylococcus属やPropionibacterium acnesなどの常在菌のみが検出された.過去論文ではStaphylococcus属やPropionibacterium acnesが血管炎などの増悪因子として働くことを報告しているものもあるが,まずは培養中のコンタミネーションの可能性を考え,大動脈検体培養前での菌同定を試みた.これにより,培養前と培養後で検出菌が一致していれば,その菌の存在および活性は信憑性のあるものとなる.計5例の手術検体を凍結保存後PCRを行ったが,培養後PCRと異なり菌量が少ない事からその条件設定に苦慮した.検体の破砕法や増幅条件などを設定し,最終的には細菌の16SrRNA領域を増幅することが可能なった.今後は菌の同定も可能となると考える.今後は,この長期培養前後でのPCR菌同定で検出菌のマッチングを行い,当初の予定通りのサンプル数を集め解析を進めていく予定である.