閉塞性動脈硬化症は下肢の慢性虚血性変化を本態とする疾患だが、同時に心血管病の高リスク群であり全世界的で罹患患者が大幅に増加している。本疾患は多数の環境因子と遺伝的因子が疾患発症に関連する生活習慣病の一種と想定されているが、疾患発症に関する遺伝学的報告は極めて少ない。今回遺伝子多型の一種である一塩基多型 (SNPs)に着目して、多数の患者群DNAサンプルと対照群サンプルを使用して全染色体で網羅的解析(ゲノムワイド関連解析:GWAS)を行い、第4、7、13染色体上で疾患に関連する遺伝子領域を特定した。第13染色体上のSNPに関しては、In vitroでリポーター遺伝子解析による機能解析を行った。今回検出した3 SNPsは全て動脈硬化進展メカニズムに関与する遺伝子と相関を認め、従来のリスクファクターに依存しない本疾患固有の遺伝的因子であることを確認した。今回同定された疾患関連遺伝子領域は病態メカニズムを構成する因子のごく一部であり、更に詳細な解析が必要と判断した。特に平成27年度からはバイオバンクジャパン登録症例を対象に施行された、90万SNPsを解析するプラットフォームのGWAS結果に関して解析を進めると共に、ASO患者サンプルから併存疾患の少ない65歳以下の患者24名を選択して全Exom解析を施行して解析を行った。更に将来的にmicro RNA解析やプロテオーム解析を行うことを目的として、ASO患者血清サンプルを収集するための準備を行った。
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