研究課題
近年、高齢化や食生活の欧米化により動脈硬化性疾患の増加が顕著となった。腹部大動脈瘤は動脈硬化が基盤にあり、高血圧、肥満、高脂血症、喫煙どを危険因子として発症すると考えられているが、その発症の機序はいまだ不明である。本研究は、腹部大動脈瘤形成および進展と肥満、メタボリックシンドロームとの関連を明らかにし、さらにこれらの病態に伴うアディポサイトカイン産生異常をターゲットとした新たな血管病の治療戦略を提示することにある。2013年、初年度は、マウス腹部大動脈瘤モデルを作成し、インスリン抵抗性改善作用薬の一つPPAR-γ agonist(ピオグリタゾン)の効果を検討した。【CaCl2塗布によるマウス動脈瘤モデルの作成】野生型マウス(C57/BL6)を用いてCacl2塗布による腹部大動脈瘤モデルを作成し得た。ネンブタールにて麻酔した野生型マウスに腹部正中切開を行い腹部大動脈を露出させ、0.5MCaCl2 溶液に15分間暴露した後、生理食塩水で腹腔内をよく洗浄して再び創を閉じることで作成した。手術後約6週間後に腹部大動脈瘤を形成されていることを確認し、血管を摘出した。【PPAR-γ agonist による大動脈瘤形成抑制効果の検討】野生型マウスをPPAR-γ agonist(ピオグリタゾン)投与群とコントロール投与群の2群に分け、それぞれ1週間経口投与した(混餌投与)。1週間後、上記Cacl2塗布腹部大動脈瘤マウスモデルを作成した。薬剤の混餌投与は引き続き行った。術後6週後に標本を摘出し、動脈瘤径の比較検討を行った。その結果、PPAR-γ agonist(ピオグリタゾン)投与群では、コントロール群に比較し、有為に大動脈瘤径を抑制していた。
2: おおむね順調に進展している
我々の今年度の研究成果で、PPAR-γ agonistの投与が大動脈瘤形成、進展抑制効果を確認し得た。そこで今後は、このメカニズムの検討を行っていく。
PPAR-γ agonistはアディポサイトカインの一つで、強力な抗炎症作用を示すアディポネクチンの分泌促進作用、炎症性サイトカインMCP-1の発現低下作用を有することが報告されている。そこで、特にPPAR-γ agonistのアディポネクチン分泌促進を介した機序の関与を検討していく。
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