研究実績の概要 |
昨年度まで行った硬膜外冷却の冷却温度4℃による冷却効果は判明したので、今年度は冷却温度を20℃としての実験を6頭で行った。滅菌下において右側臥位にし、L1/L2の椎弓間より経皮的にCooling catheterを挿入、透視下にて尾側から頭側へ向かい、Th7のレベルまで挿入した。温度プローべを先端に内蔵したカテラン針をL3/4よりTh5/6のレベルまで2椎間ごとに挿入し脊髄温度を測定した。鼻咽頭温および直腸温を持続的にモニターした。 また、側方より第4肋間開胸としヘパリンを静注、大動脈を鎖骨下動脈分岐部直下にて遮断、血流を遮断した。Catheter内に冷却水を循環させるcooling時間は、遮断30分前より, 大動脈遮断35分間、および遮断解除後30分間(post cooling)とした。血流を再開後、胸壁を3層に閉じた。術中SEPにて60秒毎にSEPのamplitudeおよびlatencyを記録した。神経学的所見をTarlovのmodified scoreに従い、手術後、12、24、48時間後の各時点において、評価した。術中の鼻咽頭温および直腸温は昨年まで行ったcontrol群、低温群と比較して有意差はなかった。今回の15℃で冷却した群の術後12時間後のTarlov scoreは3,3,4,4,4,4であり、control群に比較して冷却効果を得た。術中MEP消失までの時間は4℃冷却の群と比較して短い傾向にあるものの有意差はなく、control群と比較すると有意に長かった。手術後、HE染色およびNissle染色にて固定したのち光学顕微鏡で病理組織学的検索を行なった。HE染色ではcontrol群で脊髄前角のneuronの壊死を著明に認めたにも関わらず、低温冷却群や高温冷却群では脊髄の壊死はほとんど認められず20℃の冷却であっても脊髄保護効果が十分であると思われた。
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