研究実績の概要 |
100例の肺癌組織を用いて、Survivn splice variants mRNA発現量、組織型、リンパ節転移、年齢、性別を共変量とした多変量生存時間解析によって、Survivin 3B高発現群が予後不良因子、Survivin 2B高発現群が予後良好因子であることを示したのち、short interfering RNAを用いた検討によって、すべてのvariantsを抑制するshort interfering RNAはSurvivin 2alfa以外のすべてのSurvivin variantsを抑制し、Survivin 2Bおよび3B特異的なshort interfering RNAはそれぞれを特異的に抑制することが示された。この結果から、この3種類のshort interfering RNAを遺伝子導入した後、肺癌細胞株の増殖能の変化を観察したが、増殖動態に有意な変化は認めなった。siRNAに代わりshRNA, stealth RNAiでの検討も行ったが同様の結果であった。Survivin variantsごとの抑制効果の相違を検証できず、予後解析によって示されたvariantsごとの予後への寄与の相違を細胞増殖能の相違から示すには至らなかった。予期していた結果と異なった結果に至った理由として、用いた肺癌細胞株におけるsurvivin variantsの発現絶対量が少なく(2Bでは25%, 3Bでは2.8%)、これをsiRNAによって抑制したとしても細胞全体の増殖能には余り影響を及ぼさないと推察された。その他の利用可能な肺癌細胞株にはsurvivin variantsの発現量が多いものが無く、この推察を証明する事はできなかった。肺癌組織において最も発現量が多いsplice variantsはwild typeであったが、正常肺組織では、2alfaの発現が最も多く、wild type は2alfa の1/30程度であった。2alfaは抗アポトーシス作用を喪失していると考えられており、正常肺組織では2alfaが優位に発現することで、他のvariantsの機能を抑制している可能性が考えられた。
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