研究課題
昨年度までの成果をふまえ、移植後気道リモデリングへの自然免疫の関与を同所性気管移植モデルを用いて解析した。主要組織適合抗原(MHC) major mismatch pairであるBalb/c(H-2d)→C3H/HeN(H-2k)の組み合わせでマウス同所性気管移植を行い、術後21日でグラフトの評価を行った。Toll-like receptor(TLR)4が果たす役割を検討するため、TLR4のmutant mouseであるC3H/HeJ(H-2k)を使用した。Balb/c→C3H/HeNの組み合わせで、気管上皮下の著明な線維化が観察され、移植気道における線維化を検討するに妥当なモデルだと確認された。C3H/HeJマウスをレシピエントに用いた気管移植においても、C3H/HeNマウスをレシピエントに用いたのと同様に気管上皮下の線維化は引き起こされた。従って、MHC major mismatchの組み合わせでは、たとえTLR4の変異があってもそれだけではグラフトの線維化は避けられないことが示唆された。免疫抑制剤を併用した場合では、C3H/HeJマウスをレシピエントとした群で、病理学的スコアリングで傷害の程度が有意に軽く(p<0.05)、αSMA染色陽性面積が有意に少なかった(p<0.05)。CD3陽性T細胞の数は有意な差が認められなかった。このことは、TLR4のシグナルは移植片の拒絶と線維化において補助的な役割を果たしており、獲得免疫系の影響を弱めた条件では、TLR4のシグナルを抑制することで移植片の線維化が軽減されうることが示唆された。
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Transpl Int
巻: 28 ページ: 761-763
10.1111/tri.12525.
http://cts.m.u-tokyo.ac.jp/thoracic-surgery