研究課題
平成27年度は昨年度までのデータからビノレルビン耐性におけるFocal Adhesion Pathway、特にIntegrin, Src Family Kinaseの関与を分子生物学的および臨床的側面より証明する実験を行った。1.臨床標本におけるSrcの活性化と予後の関連:当院にて手術を行い術後補助化学療法としてシスプラチン+ビノレルビンを行った患者を対象とし、Phospoho-Src (Y416) の有無を免疫染色で調べた。陽性30例、陰性30例で全生存率および無再発生存率を比較したところ両者に差は認められなかった。既報においても、pSrc (Y416)と予後に相関のないことが示されており、pSrcはFocal Adhesion Pathway活性化のバイオマーカーとはならないことが示唆された。2.Focal Adhesion Pathway関連遺伝子ノックダウンによるVRB感受性への影響:H1299 VRB耐性株に対しsiRNAを用いてSrc, Fyn, ILK, ITGB3それぞれのノックダウンを行った。qPCRによって各siRNAは有効に遺伝子発現を低下させていたが、薬剤感受性検査においては、いずれのノックダウンにおいてもVRB感受性の回復は得られなかった。3.Saracatinibの有効性の証明:昨年度までのデータでABCB1阻害薬とSrc阻害薬の併用が有効であることが示されていたが、Src阻害薬であるSaracatinibはABCB1阻害作用を有することをCalceinを用いたEfflux assayで示した。また薬剤感受性試験においてSaracatinibはVRB耐性株に交差耐性を示さないこと、VRBとの併用で相乗効果を有することを示し、VRB耐性株に対して有効な治療薬であることを証明した。
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Ann Thorac Surg
巻: 99(4) ページ: 1122-9
Cancer Med
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