研究実績の概要 |
1.肺癌手術患者における術中胸膜自家蛍光診断 肺癌手術における術中胸膜自家蛍光診断を72例に行った.胸膜浸潤診断における白色光の感度は66.7%,特異度は41.7%,対する自家蛍光の感度は91.7%,特異度は75.0%であり,自家蛍光の優位性が実証された.
2.肺癌の胸膜浸潤部における顕微鏡的自家蛍光の変化と臨床病理学的因子との関連についての検討 【対象と方法】術中自家蛍光観察を行った胸膜変化のある肺癌27症例のHE染色標本を用いた.術中蛍光内視鏡による自家蛍光減弱-/+:15/12,n-/+:25/2,pl-/+:22:5,ly-/+:22/5であった.蛍光顕微鏡の励起光波長と検出波長は,蛍光内視鏡にあわせて設定した.正常部と癌部それぞれ3カ所の胸膜の自家蛍光強度を画像解析ソフトで定量化した.また,collagenⅠ, collagen Ⅳ, fibronectinに対する免疫染色を行い,HE染色標本の自家蛍光強度と対比させることで,胸膜の自家蛍光減弱に関与する物質について検討した.【結果】蛍光内視鏡で癌部の胸膜に自家蛍光減弱を認めた症例においては,蛍光顕微鏡でも自家蛍光減弱を認める傾向があった(p=0.06).pl+の症例はpl-に比べ有意に蛍光強度比が低く(0.47 vs 0.81, p=0.05),pl+またはly+の症例では,pl, lyいずれも-の症例に比べ有意に蛍光強度比が低かった(0.47 vs 0.88, p=0.007).collagenⅠ, fibronectinは正常胸膜には認められ,自家蛍光減弱部位に一致して発現が低下していた. 【まとめ】肺癌の胸膜浸潤部における自家蛍光減弱は癌の浸潤性を反映している可能性があり,蛍光内視鏡による胸膜浸潤診断が有用であることを示唆する結果であった.また自家蛍光減弱に関与する物質はcollagenⅠ, fibronectinである可能性が示唆された.
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