研究課題
本研究はUHRF family分子を中心とした肺癌のエピジェネティクス異常に関わる分子に着目し,肺癌の診断及び予後,或いは治療感受性に関わる分子の抽出同定を目的とするものである.本研究を契機に,肺癌における新たな治療標的分子の同定に繋げたいと考えている.これまで,UHRF family分子の発現について,ヒト肺癌組織20例と対象として,mRNAレベルでその発現を検討した.その結果,肺癌組織では非癌部と比べ,UHRF1の発現が有意に高いことを明らかにしている.また,発現レベルは腺癌に比較して扁平上皮癌や小細胞肺癌では有意に高いことが確認された.これはヒト肺癌細胞株を用いた検討でも全く同様の結果が得られた(A549腺癌細胞株<RERF扁平上皮癌細胞株<Lu99大細胞癌細胞株<MS-1小細胞癌細胞株の順に高発現).この結果を踏まえ,ヒト肺癌組織30例に対し,免疫組織学的検討を加えた結果,同様に腺癌に比べ扁平上皮癌で明らかに発現が高いことが確認された.さらに腺癌では予後との関連が示唆され,化学療法などの治療に関する耐性等に関連する可能性も示唆された.近年肺癌の個別化医療が進んでおり,その際には組織の鑑別な困難な癌に対して,各種マーカーを用いて診断を補完し,より正確な組織診断をすることが重要とされている.我々の結果はUHRF1が肺癌の診断マーカーとして有望であることを示唆するもので臨床的意義は大きい.さらに我々はこれらの知見をもとに,新たな肺癌の診断,予後マーカーの抽出も開始した.本研究に付随する検討である網羅的遺伝子解析を用いたヒト肺癌組織の解析によって,新たな分子マーカーFAM83Bを既に同定した.これまでの検討から,Preliminaryではあるが,本分子が診断マーカーのみならず,予後マーカーや治療の標的となる可能性があることを確認しており,その結果の一部について投稿予定である.
2: おおむね順調に進展している
研究計画当初に標的とした分子(UHRF family)については一部臨床検体の解析を終了している.その結果,臨床的な意義を確認することができた.さらに,本研究の進行過程において行われた網羅的遺伝子解析によって,FAM83Bという全く新たな標的分子の抽出に成功した.
これまで,本研究は順調に進展しているが,さらに研究を推進するため,以下の具体的方針に基づき検討を進める予定である.1.本年度から,本研究に関わる人員を増員することとし,既に数回の研究打ち合わせを開始した.2.UHRF family分子の臨床的意義については既に述べたが,この有意性を確実とするため,さらに症例数を増加し検討を進める.また,遺伝子解析も併用し,これらの結果を確実なものとする.3.これまでの臨床検体を用いた検討の成功を踏まえ,基礎研究に移行しUHRF family或いは新規に同定したFAM83B分子の生物学的意義を確認,その阻害実験等によって,治療標的となりうるかどうかについて検討を行う.
うち34,776円については、平成26年2~3月に物品費として使用したが、4月支払いとなったため、その他については、既存の薬剤等を使用したため、残金が生じた。さらなる研究の推進のため、試薬購入等、物品費として使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件)
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