研究課題/領域番号 |
25462187
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小山 倫浩 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00309965)
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研究分担者 |
後藤 章暢 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70283885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺癌 / 抗癌剤 / 薬物代謝酵素 / チトクロームP450 / 抗癌剤感受性 |
研究概要 |
肺癌組織においても肝細胞と同じように抗癌剤は薬物代謝酵素により、吸収、分布、代謝、排泄されている。異なる薬物代謝酵素によりそれぞれの抗癌剤は代謝される。さらに、代謝された抗癌剤の抗腫瘍作用は低下するだけでなく、プロドラッグ性の抗癌剤では抗腫瘍作用は増強する場合もある。このため、本研究では、肺癌の薬物代謝酵素発現を網羅的に解析することで、薬物代謝の面から抗癌剤感受性を評価することができるバイオマーカーを検討し、新規の抗癌剤感受性評価法を開発することを目指している。平成25年度に行った研究の概要を示す。 1.肺癌組織の集積 外科的に切除された肺癌約100例を対象とする。パクリタキセル、ドセタキセルや5-エフユーなどの化学療法を施行した約30例を対象例に含める。これらの対象例の臨床病理学的情報の集積を行った。 肺癌組織からRNAを抽出:対象例の肺癌組織の一部をRNA抽出用の試料としてRNA保存液(RNAlater, Ambion Inc., USA)に保存する。以前の報告に従ってRNA抽出用の試料はホモジナイズした後、RNA抽出キット(SV Total RNA Isolation System, Promega Corp. USA)を用いてRNAを抽出した。 肺癌組織からスライドを作製:対象例の肺癌組織の一部からパラフィン包埋標本を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行う。さらに、以前の報告に従って免疫組織化学染色用のスライドを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌組織の集積:外科的に切除された肺癌約100例を対象とする。パクリタキセル、ドセタキセルや5-エフユーなどの化学療法を施行した約30例を対象例に含める。これらの対象例の臨床病理学的情報の集積を行った。 肺癌組織からRNAを抽出:対象例の肺癌組織の一部をRNA抽出用の試料として、RNA保存液(RNAlater, Ambion Inc., USA)に保存する。以前の報告に従ってRNA抽出用の試料はホモジナイズした後、RNA抽出キット(SV Total RNA Isolation System, Promega Corp. USA)を用いてRNAを抽出する。 肺癌組織からスライドを作製:対象例の肺癌組織の一部からパラフィン包埋標本を作製し、HE(hematoxylin and eosin stain)染色により組織学的診断を行う。さらに、以前の報告に従って免疫組織化学染色用のスライドを作製する。 肺癌組織からミクロソームを抽出:対象例の肺癌うち約20例を対象として、以前の報告に従って対象例の肺癌組織の一部からミクロソームを抽出する。 平成25年度の研究計画は上記の通りであったが、実際には「パクリタキセル、ドセタキセルや5-エフユーなどの化学療法を施行した約30例を対象例に含める」ことが困難であった。さらに「肺癌組織からミクロソームを抽出:対象例の肺癌うち約20例を対象として、以前の報告に従って対象例の肺癌組織の一部からミクロソームを抽出する」ことが時間と経済的に困難であった。このため、本計画は90%は予定通り遂行できたが、確認実験は一部割愛することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の1.肺癌組織の集積、が概ね終了したので次の研究計画を遂行する。 2.マイクロアレイ法による薬物代謝酵素の網羅的解析:Human Drug Matabolism Gene Array(SuperArray Bioscience Corp., MD, USA)を用いて1.で抽出した約100例のRNA中の薬物代謝酵素96種類(I相酵素:25種、II相:56種、III相:15種)の網羅的解析を行う。また、薬物代謝酵素RNA発現量はGAPDH (glyceraldehydes-3-phosphate dehydrogenase)のRNA量に対する比でnormalizationを行い解析する。 3.免疫組織化学染色法による薬物代謝酵素の検出:LSAB(labelled streptavidine biotin)法を用いて、1.で作製した約100例のスライドからI相の薬物代謝酵素であるCYP(CYP1A1, CYP1B1, CYP2A6, CYP2E1, CYP3A, CYP19)、II相のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、III相のABC(ATP-binding cassette)トランスポーターの発現を以前の報告に従って検出し、小細胞癌と非小細胞癌の間のタンパクレベルにおける薬物代謝酵素発現の相違や、その他の臨床病理学的因子によるタンパクレベルにおける薬物代謝酵素発現の相違を検討する。 4.抗癌剤感受性を評価することができるバイオマーカーの選別:2.から3.までの結果から、RNAレベルとタンパクレベルともに高度に発現していた遺伝子を同定し、薬物代謝の面から抗癌剤感受性を評価することができるバイオマーカーの候補として選別する。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね順調に計画を遂行し、予算もほぼ予定通り使用した。 無駄に使い切ることなく次年度の計画を見越し補正予算として次年度へ繰り越しただけである。 次年度は「マイクロアレイ法による薬物代謝酵素の網羅的解析」で高額なアレイのためのチップを購入し、「免疫組織化学染色法による薬物代謝酵素の検出」のための抗体(1本5万円相当)も10種類程度購入を予定している。 このため、今年度に使用しきれなかった95,435円も使用予定としている。
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