研究課題
肺癌組織においても、チトクロームP450(CYP)や癌幹細胞マーカー(aldehyde dehydrogenase-1:ALDH1)などの薬物代謝酵素が発現している可能性が指摘されている。抗癌剤は肺癌組織内でこれらの薬物代謝酵素により代謝・排泄されるため、肺癌組織で効果的な抗癌作用を発揮できなくなる場合がある(肺癌の抗癌剤耐性)。このため、本研究では、肺癌の薬物代謝酵素発現を網羅的に解析することで薬物代謝の面から抗癌剤感受性を評価できるバイオマーカーを検討し、新規の抗癌剤感受性評価法を開発することとした。平成27年度に行った研究の概要を示す。肺癌組織の集積:外科的に切除された肺癌約200例を対象として、これらの対象例の臨床病理学的情報の集積を行った。免疫組織化学染色法による薬物代謝酵素の検出:LSAB(labelled streptavidine biotin)法を用いて、肺癌78例(腺癌48例、扁平上皮癌30例)のスライドからI相の薬物代謝酵素であるCYP(CYP1A1, CYP1B1, CYP2A6, CYP2E1, CYP3A, CYP19)の発現検出を行なった(男性:女性=56:22、38歳~80歳、平均年齢65.7歳)。CYP発現は扁平上皮癌で認められず、腺癌におけるCYP1A1・CYP2A6 ・CYP2E1 ・CYP3Aの陽性率はそれぞれ43.8%(21/48)、45.8%(22/48)、39.6%(19/48)、39.6%(19/48)であった。さらに、肺腺癌183例(男性:女性=81:102、23~85歳、平均年齢68.5歳)のスライドから癌幹細胞マーカー(aldehyde dehydrogenase-1: ALDH1)の発現検出を行なった。ALDH1発現は、腫瘍内の染色強度と染色面積より算出するH-score (0-300) (Shenton et al, 1998)を用いて評価した(ALDH1-score)。ALDH1-scoreの平均は39.8であった。
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Personalized Medicine Universe
巻: 4 ページ: 40-45
Sci Rep.
巻: 5 ページ: 14142
10.1038/srep14142.