研究課題
肺扁平上皮癌に対するdriver oncogeneが解明され、分子標的薬の開発が進められてきている。我々は新たな標的療法確立のため、肺扁平上皮癌で活性化される転写因子SOX2 に注目した。Meyersonらは、肺扁平上皮癌でのSOX2の活性化を報告し、当該転写因子が系統維持型癌遺伝子であることを解明した (Bass AJ, Meyerson M et al. Nat Genet. 41:1238-42. 2009)。 in vitroにおける検討にて、siRNAによるSOX2のsilencingは、SOX2発現型肺扁平上皮癌株の増殖を抑制し、さらに肺扁平上皮癌xenograftへ抗腫瘍効果を示した。SOX2関連遺伝子として論文報告のある99遺伝子につき、米国Cancer Genome Atlas data portalにおける178名の肺扁平上皮癌患者のRNA-sequence dataset および 米国Genentech社より報告された105種の非小細胞肺癌株におけるRNA-sequence dataset(Klijn C. et al. Nature Biotechnology. 33: 306-312. 2015)を用いたbioinformatics解析を行った結果、肺扁平上皮癌においてSOX2に制御される15遺伝子を明らかにした(正相関: 11遺伝子 / 逆相関: 4遺伝子)。うち細胞周期関連遺伝子は唯一CDKN1Aであり、ここでSOX2との関連を検証した結果、SOX2 silencingにより肺扁平上皮癌株においてCDKN1Aの発現増強がRNAおよび蛋白レベルで確認された。以上より、肺扁平上皮癌へのSOX2の標的治療の有効性が示され、抗腫瘍性へのCDKN1Aの関与が明らかとなった。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 20113
10.1038