研究課題/領域番号 |
25462192
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
岩田 輝男 産業医科大学, 医学部, 助教 (00435124)
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研究分担者 |
田中 文啓 産業医科大学, 医学部, 教授 (10283673)
浦本 秀隆 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90389445)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺癌 / 循環腫瘍細胞 / 多発肺癌 / 肺内転移 |
研究概要 |
現在の臨床病理学的基準での多発肺癌と肺内転移の鑑別は正確性に欠けるため、本研究では末梢血液中の循環腫瘍細胞(CTC)に着目し、検出数とそのgenotype解析を用いて正確な鑑別法を樹立することを目標に実験を行っている。 今年度は、現段階でCTC測定の「標準」とされるCellSearch Systemを用いて、臨床的に多発肺癌もしくは肺癌の肺内転移の疑いで手術を施行する症例のCTCをprospectiveに測定中である。並行して、検出感度や再現性向上を目指して新しく開発したCTC-Chipを用いての比較検討を行った。CellSearchが抗上皮細胞接着因子(EpCAM)抗体による免疫磁気分離で上皮由来の腫瘍細胞を捕捉するのに対し、CTC-Chipは抗EpCAM抗体により上皮性細胞をChip上に捕捉する。まずは蛍光標識した肺癌細胞株を用いてCTC-chipによる捕捉率を確認した。細胞懸濁液のチップ通過流速等の条件や至適検出条件を検討し、捕捉率や再現性の向上のため、CTC-chipの更なる改良に取り組んだ。これまでのところ蛍光標識した肺癌細胞株を用いての捕捉実験ではCellSearchと同程度の回収率を認めた。実際の臨床検体では、血球細胞と区別するために上皮性細胞骨格のサイトケラチン、Hoechstによる核染色及びCD45の蛍光免疫染色を行い、サイトケラチン陽性で核を内包し、かつCD45陰性の細胞をCTCとした。 CTC-Chipで捕捉した細胞は、Chip表面より細胞を溶解してDNAを抽出し、遺伝子解析を行うことが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTCの自動化検出システムである“CellSearch”を用いたCTCテストは、乳癌・大腸癌・前立腺癌のバイオマーカーとして米国では既に臨床使用されている。従ってCellSearchの条件検討は不要で、装置と試薬キットがあればすぐに臨床検体のCTC測定が可能である。本研究ではこれをreferenceとして新しいデバイス“CTC-Chip”の有用性を確認した。さらにChipに捕捉された細胞の遺伝子解析により多発肺癌と肺内転移の識別への有用性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的に多発肺癌、もしくは肺癌の肺内転移が疑われ、手術を施行する症例の蓄積をprospectiveに行っていき、肺癌の進行度や転移状態とCTCの相関関係に関し解析を加えていく。さらに、補足した循環腫瘍細胞の生物学的解析をすすめる予定である。捕捉されたCTCからDNA/RNA抽出や、遺伝子変異/発現異常解析、具体的には、EGFR, K-ras, EML4-ALK のgenotypeを解析し原発巣のgenotypeとの相関関係を解析する作業を行っていく。また、それぞれの遺伝子変異に個別の治療薬 (Gefitinib, Erlotinib, Crizotinib) が臨床的に使用された場合、その効果について原発巣とCTCのgenotypeが効果予測因子として有益か否かを検討していく。また、CTCの補足数と肺内転移や再発との関係を解析し、予後予測因子としての有用性を検討し、化学療法や補助化学療法の適応決定に有益か否かを明らかにしていく。肺癌において肺内転移では、多発肺癌と比しCTCは多いことが予測される。また、CTCの遺伝子変異の有無及び変異部位に関しては原発巣の特性を反映していることが予想され、その遺伝子変異のみならず、2nd mutation (耐性遺伝子変異であるT790MやMet amplification) の検出を可能とし、分子標的薬や化学療法のregimen決定に有益な検査方法の樹立を目指す。また、実際に治療がなされた場合、その効果判定のbiomarkerとしてCTCが有益か否かの時系列での評価を加えていく。
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