研究課題
受容体型チロシンキナーゼanaplastic lymphoma kinase(ALK)の融合遺伝子を有する肺癌は、ALK阻害薬であるクリゾチニブが著効を示す。しかし、他の分子標的薬と同様に薬剤耐性例が経験される。そこで、耐性獲得の機序として、ALKの側副経路をALK陽性肺癌において明らかにし、再発の予測とセカンドラインの治療法開発によりALK阻害薬の耐性克服を目指すことを目的とした。平成25年度は、下記の研究を進めた。1.症例の抽出:対象症例を効率よく拾い上げるために、リアルタイムPCR法を用いた新たなスクリーニング方法を開発した。既知のALK転座肺癌症例を陽性コントロールとして、ALK遺伝子の3'側の発現量を指標にした解析系を構築した。凍結組織の保存のある当院の肺癌患者504検体(手術症例、内視鏡生検症例)につき、RNA抽出、cDNA合成を行い、リアルタイムPCRにてスクリーニングしたところ、13症例の陽性者を見いだすことができた。2.ゲノム構造異常の検出:これまでに同定していたALK転座肺癌症例12例の治療前の原発巣もしくは縦隔リンパ節転移巣につきオリゴアレイを用いてCGH法によりゲノムコピー数変化を解析した。その結果、ゲノムの欠失領域に座位する遺伝子のうち、ALK陰性肺癌と比較してALK陽性肺癌では発現が有意に低下している遺伝子を同定した。さらに、この遺伝子の5'側ではDNAのメチル化が亢進していた。ALK肺癌においてDNAメチル化によるサイレンシングを受ける標的候補分子の同定ができたと考える。3.ターゲットリシークエンス:H26年度の計画にあげたリシークエンスの解析を開始した。IonTorrent次世代シークエンサーにより既知のキナーゼ分子やDNA修復酵素を含む409個のがん関連遺伝子のエクソーム解析を1症例に実施し、ALK転座以外の変異を見いだした。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の計画のうち、症例のスクリーニングの一部は完了しなかったが、平成26年度に計画していたターゲットリシークエンスの解析系を構築し先取りして開始することができた。総合して、おおむね順調に経過していると考える。
平成26年度の計画のうち、既に着手しているターゲットリシークエンス解析は、症例を追加する。平成25年度の症例スクリーニングを26年度も継続する。
平成25年度は初年度であったため、各種解析系の構築に主に注力した。解析系の構築は、一部平成26年度分も実施した。そのため、平成25年度の解析件数そのものは少なくなり、消耗品の支出が予定より少なくなった。平成25年度に主な解析系を構築したため、平成26年度はその解析系と繰越予算を利用して解析を進める。当初の解析件数を達成するためには、平成26年度と27年度に平成25年度分の繰り越し分を使用する必要がある。
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