研究課題
悪性胸膜中皮腫(MPM)は従来の治療に抵抗性を示す予後不良な疾患であり、その病態の解明、並びに新しい治療法の確立が急がれる。癌幹細胞は自己複製能・多分化能を備え、薬剤・放射線治療に対しても高い抵抗性を示すことが報告されており、新しい癌治療戦略における標的と考えられる。マイクロRNA (以下、miRNA)はRNA干渉によりタンパク質の発現を制御するが、癌幹細胞と関連のあるmiRNAが報告され、新規治療法に結びつく可能性が示唆されている。本研究の目的は、MPMにおける癌幹細胞特性に関連するmiRNAを同定・解析し、MPMの病態の解明と新しい治療法の開発を目指すことである。本研究では3年間の研究期間内で以下の項目を検討する。#1. 癌幹細胞特性に関連したmiRNAをエピジェネティクス異常、薬剤耐性癌幹細胞様細胞に着目して網羅的解析により同定し、その機能を解析する。#2. #1で同定したmiRNAの悪性胸膜中皮腫に対する抗腫瘍効果を検討する(in vitro&vivo)。#3. #1で同定したmiRNAの薬剤・放射線感受性の改善効果を検討する。網羅的解析から候補miRNAをmiRNA-34 family(特にmiRNA-34b/c)とmiRNA-200 family(特にmiRNA-200c)として、発現を確認したところ、多くのMPM細胞株でその発現が低下していることを確認したため、miRNA-200c発現ベクターによる細胞導入実験を行ったが、幹細胞分子マーカーの発現変化や細胞増殖、白金製剤・葉酸拮抗剤などのへ薬剤感受性に変化を認めなかった。そこで、幹細胞特性を持つ細胞のみをソーティングし、網羅的解析を行い、候補miRNAを絞り込むこととした。手技の確立に苦労をしたが、これまでYUMC63、YUMC64、H2052について、幹細胞特性を持つ細胞の抽出が完了して、現在miRNAアレイ解析の準備を行っている。
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Oncol Lett
巻: 1 ページ: 705-712
10.3892/ol.2015.3955