研究課題/領域番号 |
25462206
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 英明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359587)
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研究分担者 |
齊藤 延人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60262002)
石崎 泰樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90183003)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 白質障害 / 細胞移植治療 / 軸索再生 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
平成26年度までに大脳白質病変モデルラットの作成時における技術的な面においては、穿刺針の角度を変えることにより、内包へのエンドセリン注入(脳室に漏れることによる合併症を回避)法の最適化を実現した。選択的大脳白質障害を作成することができた。運動機能においては、外見上は明らかな麻痺症状を呈することはなかったが、Ladder testによる詳細な運動機能評価において病変部位の対側である右脚において、術前日から手術1日後にかけて有意に運動機能の低下を認めた。 H27年度においては、分担研究者によりMRIを用いて、細胞移植治療による効果を脳梗塞巣変化を指標として同一個体において評価した。細胞移植治療に関しては、以前、筆者らが脳障害時における神経保護作用を報告している脳微小血管内皮細胞(MVECs)を用いた。同種成熟ラット脳皮質より調製したMVECsを、内包障害発症後7日目に移植した。対照としてウシ血清アルブミンの移植(注入)を用いた。移植直前と移植後14日目に MRIを撮影し,病変体積を計測し経時的体積変化を解析した。MVECs移植群は対照群と比較し,MRI T2 高信号病変の体積の有意な縮小を認めた。MR画像評価と並行して、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)およびオリゴデンドロサイト系譜細胞(OLCs)の細胞動態に注目して組織学的評価を行った。MVECs移植群では対照群と比較し,OPCsの細胞数およびOLCsの細胞数について有意な増加を認めた。MVECs移植によりに,OPCsよびOLCsが増加することにより髄鞘形成が促進され、白質障害(梗塞)が改善するメカニズムが示唆された(J Neurochem. 2015 135: 539-550)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大脳白質障害における細胞移植治療効果に関して、オリゴデンドロサイトによる髄鞘の改善の可能性は示されたが、軸索再生に関しては尚検討すべき課題として残る。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞移植(MVECs)に よる治療効果に関しては、移植細胞からの分泌因子(エクソソーム)が、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)やオリゴデンドロサイト系譜細胞(OLCs)の生存・増殖調節に重要な役割を演じている可能性が示唆された。臨床治療への応用を目指して、移植された細胞から分泌されるエクソソームに含まれる神経栄養因子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験はおおむね終了し、現在研究成果の論文投稿準備中である。英文校正や出版費用のため次年度に使用額の申請をお願いした。また追加実験の可能性があり次年度に予算を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
論文草稿の準備とその後英文校正費に使用する予定である。出版費もカラー+オープンアクセスにすると約50万円の予算を要する見込みである
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