1.脳血管モデル作成:3DプリンターでABS樹脂製脳血管モデルを作成。これを基にシリコーン製の中空構造を有する脳血管モデルを作成。この脳血管モデルを全身血管モデルに組み込み灌流ポンプによる拍動流の中でX線透視下でカテーテル操作が可能なシミュレーションシステムを完成した。 2.シリコーン製脳動脈瘤モデル作成:同様に脳動脈瘤モデルを作成。脳動脈瘤に対する脳血管内治療のシミュレーションが可能となった。術者の経験が治療の成否に関わるものであるが、このシステムにより経験の少ない医師でも技術習得が可能となった。 3.脳血栓回収術シミュレーションモデル作成:多糖類に凝固剤を加えて血液成分を含まない人工血栓を開発し、脳血管モデルに注入して中大脳動脈閉塞モデルを作成した。急性期脳梗塞で実施されている血栓回収術のシミュレーションが可能となった。 4.本シミュレーションシステムによる血管内治療技術訓練 (1)血管内治療の経験のない研修医がマイクロカテーテル操作を術者として体験することにより、血管内治療への理解と興味を深めることになり、血管内治療を実践する分野に進む動機づけをすることになった。(2)脳動脈瘤の血管内治療の実践経験の乏しい医師が本システムで脳動脈瘤治療を体験することにより、治療上の重要な点を理解、習得することが可能となり、その後の実践で非常に有用であったとの報告を受けた。(3)急性期脳血栓回収術を本シミュレーションシステムで再現し、実際の治療における技術的な問題点を解明し、解決方法を検討し、更なる機材の改良法を見出すにいたった。 5.シミュレーションシステムを完成させ脳血管内治療の有効性と安全性を高めるという本研究の目的はほぼ達せられたと言える。
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