【目的】加齢に伴う脳機能や認知力の低下はあるが画像上明らかな病変のない例もある。その一因に白質変性の関与が挙げられており、拡散テンソル法を用い微小レベルで加齢変化に伴う白質変性の解析が近年進みつつある。しかしヒトではその終生変化の解析と組織検索は難しい。そこでrat脳白質のfractional anisotropy(FA)値を終生にわたり経時的に測定し、FA値と加齢による白質変化、組織との関連の分析を試みた。【方法】対象はSD rat、7.0-T MRIを使用しmulti shot spinecho type EPI法、b value; 812 sec/mm2で生後18週から102週まで4週間おきに各週5匹を撮影。拡散テンソルdataを3回計測し、脳梁部の平均FA値(mean FA value:mFA)を算出した。同時に体重変化も観察した。別に生後28週から12週ごとの灌流固定脳を作成しトルイジンブルー染色にてミエリン量の定量も試みている。【成績】脳梁部mFAは生後102週まで生涯を通じ0.561から0.667まで増加し続けた(生後42週以降は有意差なし)。有意差は生後18、22週と50週以降、生後30 週未満と70週以降、生後34 週未満と82週以降で認めた(p<0.05)。我々の想定とは異なり脳梁部のFA値は加齢により若年期と比し有意に増加し、壮年期以降も増加傾向を示した。一方体重は成長に伴い34週頃まで増加、以降有意差がなくなりmFAより早期にplateauに達した。体成長の終了後もmFAの増加は継続しており、我々が以前報告した生後早期のdataからは発達によるミエリン量増加がmFA増加に関連する可能性もある。しかし現在組織作成、分析途上でありミエリン量とmFAの変化に有意な関連は得られていない。加齢によるmFA増加の原因究明には更なる組織学的検索が必要である。
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