研究課題
24匹の雄性SDラットを用い、くも膜下出血モデル(perforation model)を作成した。脳皮質の脱分極はdirect current (DC) potentialで確認し、脱分極の伝播はnicotinamide adenine dinucleotide (NADH)蛍光画像で評価した。同時に脳血流と頭蓋内圧をモニターした。くも膜下出血モデル作成24時間後にDC potentialを評価した部位の組織切片を作成し、神経障害の有無を評価した。DC potentialの変化は以下の3つのタイプに分類された。1時間の観察時間内に脱分極を認めない群(type 1)、脱分極を認めるものの平均33.3分で80%まで回復する群(type 2)、脱分極したまま回復しない群(type 3)。各タイプの頻度はtype 1: 44%、type 2: 27%、type 3: 29%であった。各タイプは頭蓋内圧の上昇と相関を認め、type 3で最も高い頭蓋内圧を認めた。組織評価ではtype1は正常であったが、type2と3は脱分極時間に依存して種々の程度の神経障害を認めた。50%の神経障害を引き起こす脱分極時間は22.4分と算出された。皮質拡散抑制はNADH蛍光画像で可視化することができた。また皮質拡散抑制はtyp1に属する3匹のラットくも膜下出血モデルで認め、モデル作成後平均5.1分で出現した。脳血流の上昇と共に頭部の前方から後方に向けて3 mm/分の速度で半球全体に拡散し、平均2.3分以内に再分極した。皮質拡散抑制を認めた組織では神経障害は認めなった。本研究ではくも膜下出血後急性期の皮質拡散抑制の2次元の可視化に初めて成功した。また、くも膜下出血後急性期の電気生理学的評価で脱分極は3つのタイプに分類され、皮質拡散抑制はその1つであり、神経障害を引き起こすには脱分極時間があまりに短いことが判明した。今回の結果は今後くも膜下出血早期脳損傷の病態解明に繋がると思われる。
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