研究課題
我々は糖尿病性認知障害が血液脳関門(BBB)の機能不全により誘導されることを見出し、BBB 破綻のさらに詳しいメカニズムの解明を探索することを目的とした。(1)KKAyの週齢による血管障害を検討したところ、12週齢の段階では、光顕的レベルでは細小血管周辺のアストロサイトと思われる膨化は認められず、16週齢では、電顕レベルでの変化は認められるものの、光顕レベルでは細小血管周辺の変化は認めなかった。しかし、20週齢になると光顕レベルにおいても基底核や海馬周辺など広い場所において細小血管周辺での膨化様の変化が見出され、24週齢でも脳内に幅広く同様の所見が認められたことから、糖尿病においてはBBBのような末梢細動脈での病変がまず起こり、次第に血管障害が細小動脈レベルの血管に広がっていくと考えられた。(2)in vitroの実験系による検討に関しては、ペリサイトの培養については安定した培養条件が得られず、脳切片による老化の検討でも、老化を明確に示す染色結果が得られなかった。(3)レニン・アンジオテンシン系(RAS)がBBBにどのような影響を与えるかについて、RAS過剰発現マウス(hRA-TG)を用いてKKAyと同様にBBBの検討を行った。27週令(半年齢)のhRA-TGマウスでは膨化を伴った血管障害が観察されたものの、KKAyと比較するとその数は少なく、RASの影響も一部あるものの、糖代謝異常が血管障害を誘導している可能性が示唆された。(4)糖尿病マウスではAT2受容体刺激により認知機能が軽度改善する効果が認められ、NMDA受容体の遮断薬であるメマンチンと併用することでさらに認知機能の低下を防ぐことが見出された。さらに、総頸動脈狭窄によって誘導される血管性認知症マウスモデルでAT2受容体を刺激したところ、血流改善効果から認知機能の低下を抑制した。また、AT2受容体刺激で、脳梗塞発症後でも脳梗塞巣の大きさを軽減する効果が見出された。
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J Am Soc Hypertens
巻: 9 ページ: 250-256
10.1016/j.jash.2015.01.010
http://www.m.ehime-u.ac.jp/school/biochem1/