研究課題
本年度は、炎症性および神経障害性疼痛発症に遊離脂肪酸受容体GPR40が関与するか否か、脊髄疼痛伝達系に焦点を当てた検討を行い、現在原著論文にその成果をまとめている。以下その要旨を記載する。成熟マウス後肢に、カラゲニンあるいは完全アジュバントを投与することにより、それぞれ急性炎症(カラゲニンモデル)あるいは遷延性炎症(アジュバントモデル)を誘発させた。また、神経障害性疼痛モデルには第4・第5腰髄脊髄神経障害モデルを用いた。GPR40は、正常後根神経節および脊髄においてタンパク質発現が認められ、カラゲニン投与後6時間、アジュバント投与後3日、あるいは脊髄神経障害後14日の各時点において、発現レベルの有意な上昇が確認された。一方、各疼痛モデルマウスにGPR40作用薬(MEDICA16、GW9508)を髄腔内投与すると、濃度依存的に機械的アロディニア現象を抑制した。カラゲニンモデルにおいては、熱性痛覚過敏現象も濃度依存的に抑制した。また、これらの疼痛抑制効果はGPR40拮抗薬GW1100によって有意に拮抗され、またGW1100単独髄腔内投与により、アジュバントおよび神経障害性モデルにおいて、疼痛増強効果が認められた。次に、GPR40作動薬の疼痛制御メカニズムを検討するため、各モデルマウスより後根付き脊髄横断スライスを作製し、膠様質ニューロンにホールセル・パッチクランプ法を適用し、自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)および後根誘発単シナプス性EPSP(eEPSC)を記録した。各モデルにおいてMEDICA16の灌流適用は、sEPSCの発生頻度を有意に低下させ、またAδあるいはC線維誘発単シナプス性eEPSCの振幅も有意に抑制した。以上の結果は、GPR40が鎮痛薬開発の新規ターゲットとして有望であることを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
当初計画の土台となる成果について、複数の学会発表および学会シンポジウムでの招待口演を行うことが出来た。また、これらの結果を原著論文にまとめ、投稿可能な段階に来ている。
今後は、脊髄および知覚神経節における免疫組織化学的検討をより詳細に行う予定である。特に機械・温度感覚受容を担う一次知覚神経のマーカー分子、脊髄後角細胞層に着目した多重免疫組織染色を行う計画を立てている。
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