研究課題
本年度は、京都大学薬学部の平澤明博士よりGPR40/FFAR1遺伝子欠損マウス (GPR40/FFAR1 KOマウス) を供与頂き、各種疼痛行動試験の検討を開始した。KOマウスは正常時の機械的および熱的疼痛閾値に大きな異常は認められないが、末梢炎症や神経障害を加えた場合には、野生型に比べ、強い疼痛症状を示すことが見出された。また、興味深いことに、このような末梢炎症/神経障害性疼痛時、KOマウスは野生型に比べ落ち着きがない、機械および熱刺激に対し過剰な反応を示すなど、情動異常を示唆する行動を呈した。そこで、正常KOマウスに対して情動行動関連試験を行った結果、自発運動量の低下やうつ様行動の亢進を認めた。これらの情動行動関連の異常に関し、研究代表者らは脳内GPR40/FFAR1発現に関する予備的検討から、線条体・扁桃体・延髄領域におけるGPR40/FFAR1機能の重要性を考えた。そこで、KOマウス線条体からIn vivo マイクロダイアリシスを行い、細胞外ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニン濃度を測定したところ、野生型に比べ、KOマウスにおいてはドパミン濃度が有意に上昇しおり、逆にノルアドレナリンとセロトニンの濃度は減少傾向にあった。さらに、ドパミントランスポーターを阻害して線条体ドパミン濃度を上昇させる依存性薬物コカイン (20 mg/kgを腹腔内投与) の効果を検討したところ、野生型と比較してKOマウスでは細胞外ドパミン濃度上昇度が大きいにも関わらず、コカインによる移所運動促進作用は減弱していた。以上の検討結果から、GPR40/FFAR1システムは、線条体ドパミンシステムを含む脳内モノアミン活性を制御することで、情動行動調節に関与するという新たな生理機能の存在が示唆された。
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