研究課題
脊髄損傷においては、外傷によって生ずる組織内の出血、虚血、浮腫などが引き起こす微小循環の機能不全によって複雑な病態生理を呈し、神経組織が壊死することが機能障害(運動麻痺)などの原因となる。特に、損傷部周囲生じる浮腫は、今までは、血液脊髄関門を構成する血管内皮細胞とアストロサイトの損傷・破綻によると考えられてきたが、最近、血液脊髄関門を構成するもう一つの細胞である周皮細胞(ペリサイト)の役割に注目が集まっている。本研究では、実験的脊髄損傷におけるペリサイトの動向を観察し、さらに、骨髄幹細胞移植により、ペリサイトの損傷を抑制することで、神経組織内の微小循環調節系における重要な機能単位である血液脊髄関門の再生をターゲットにした新たな治療法を開発することを目的として、ラット実験的脊髄損傷に対する骨髄幹細胞の静脈内投与による神経機能回復のメカニズムに血液脊髄関門の安定化が強く関与することを検証することを主目的とするものである。本研究費によって、脊髄損傷作成機器を用いて、SDラットに対して、脊髄圧挫モデルを作成し、胸髄(Th10)レベルに直接損傷を加える動物実験モデルの作成を行った。予備実験より、与えるインパクトによって脊髄損傷の重症度、損傷機能が変化することが判明していたので、本年度は、損傷程度と運動神経機能の相関に関わる行動学的データを収集してきた。行動学的評価には、Basso Beattie. Bresnahan (BBB) スコアを用いた。さらに、観察期間終了後に、ラットを灌流固定し、凍結組織切片を作成し、免疫組織学的解析を行い、血管内皮、ペリサイト、アストロサイトを染色し、適切な染色条件の設定を試みた。さらに、電子顕微鏡の解析も行った。以上のように、補助金は補助条件に従って、有効に使用されている。
2: おおむね順調に進展している
本研究費によって、脊髄損傷作成機器を用いて、SDラットに対して、脊髄圧挫モデルを作成し、胸髄(Th10)レベルに直接損傷を加える動物実験モデルの作成を行った。本年度は、コントロールデータの収集を行った。具体的には、行動学的評価として損傷程度と運動神経機能の相関に関わる行動学的データをBasso Beattie. Bresnahan (BBB) スコアを用いて定期的に収集した。さらに、観察期間終了後に、4%パラホルムアルデヒドで、ラットを灌流固定し、凍結組織切片を作成したのちに、免疫組織学染色を行った。特に、血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトの染色を行い、共焦点顕微鏡で観察を行い、適切な染色条件および血管内皮細胞とペリサイトのcoverageを評価する方法を数種類のコンピューターソフトウェアを用いて探索した。
本年度の結果より、本実験系の行動学的評価、免疫組織学的評価の実現可能性が高いことが判明したため、継続して、上記コントロールデータの収集を行う。さらに、ラットより、骨髄幹細胞を採集・培養し、作成したラット脊髄圧挫モデルに対して、経静脈的に骨髄幹細胞移植を行い、神経機能の回復を評価する。運動機能の評価に加え、血液脊髄関門形成のメカニズムに関して、組織学的(軸索追跡法)、免疫組織学的、電子顕微鏡を駆使して、検討を行う予定である。
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