研究課題
脳血管障害の患者数は現在150万人と言われ毎年25万人以上が新たに発症する。介護が必要な疾患の一位は脳血管疾患(21.5%)である(厚生労働省平成22年度国民生活基礎調査報告)。我々は既にマウス胚性幹(ES)細胞、マウスiPS細胞、サルES細胞、さらにヒトiPS細胞から各種の神経細胞を分化誘導する手技を確立し、これらを移植して片麻痺マウスや脊髄損傷マウスの運動機能、さらには認知症モデルマウスの空間認識能を改善できることを報告した。片麻痺モデル動物においては、分化誘導後の運動神経をトリプシン処理をして神経細胞浮遊液を針で穿刺して線条体に注入している。この神経細胞移植にはいくつかの限界がある。(1)移植後生存細胞が少ないこと(数ヶ月後には1%以下)、(2)神経分化が高度で均一なほど機能回復は良い事がわかっているが、この方法では移植細胞の神経分化の均一化が困難であることである。この問題点を解消するため、我々はヒトiPS細胞より現在皮質運動神経細胞シート(特願2012-165108 「神経細胞シート及びその製造方法」発明者:鈴木 登)を作成してその移植を行った。この手技は温度変性ゲルを用いてシート状の神経細胞を得るもので、in vitro培養で形成させた神経細胞ネットワークを保護・保存できる優れた方法で、移植細胞の生存率の著しい増加をもたらした。さらに運動機能が移植後に統計学的に有意に回復することを確認した。運動神経細胞で細胞シートを作成して、これを移植する方法は、大脳に人為的な損傷を引き起こすことなく神経細胞移植を行うことができる有用な主義であることが示された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
International Journal of Ophthalmology and Clinical Research
巻: 2 ページ: 1-5
Inflammation and Regeneration
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10.1016/j.expneurol.2015.07.008.