研究課題/領域番号 |
25462239
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
森 健太郎 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (30200364)
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研究分担者 |
大谷 直樹 防衛医科大学校, 病院, 講師 (20573637)
和田 孝次郎 防衛医科大学校, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (70649409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | くも膜下出血 / 脳血管攣縮 / 水素 / マグネシウム |
研究概要 |
くも膜下出血後4日から14日に発生しうる遅発性脳血管攣縮(delayed cerebral vasospasm)は患者に機能的障害を来しうる重要なる病態の一つである。血管収縮やearly brain injuryなどの脳障害などにより、患者の脳に虚血性合併症を生じる。しかしながら、有効なる治療法が無いのが現状である。脳血管拡張作用のあるMg脳槽潅流と抗酸化力のある水素水静脈内投与の併用療法が、SAH後の遅発性虚血性神経障害の予防に有効である可能性がある。研究代表者(森)は、以前よりマグネシウム脳槽潅流にて、くも膜下出血後の脳血管攣縮の抑制効果を動物実験および臨床研究にて実証してきた。脳主幹動脈の攣縮にはCa ion channelの阻害剤であるMgが有効であることは明白となったが、一方遅発性の虚血性合併症(DIND)の原因は脳主幹動脈の攣縮のみならず、くも膜下出血後の酸化的ストレスなどの影響も考えられる。我々は脳梗塞後の酸化的ストレスによる神経細胞障害を水素治療によって軽減可能であることも報告してきた。現在、脳血管攣縮の治療は、単に攣縮血管の治療のみならず、背後に存在する神経細胞障害をも同時に治療できる治療法が求められている。今回、我々は水素-マグネシウム投与による新しい脳保護法が動物実験および臨床研究にて、遅発性脳血管攣縮による虚血性脳損傷を抑制しうるかを研究するものである。この方法は世界初の試みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成25年度は、まず水素-マグネシウム投与治療の安全性について動物実験で実証した。雄性SDラットに対して全身麻酔下に動静脈ライン、直腸温モニター、脳槽ドレーン、ICPセンサーを留置。Sham群では乳酸リンゲル液を1.5μL/minで30分間脳槽内投与するのと同時に開始輸液2mLを30分かけて静脈内投与した。Mg投与群ではMg溶液(5mmol/L)の脳槽内投与と開始輸液の静脈内投与、Mg+H2投与群ではMg溶液の脳槽内投与と水素水(0.8mmol/L)の静脈内投与を行った。結果は生理的パラメーターの値はすべて正常範囲内であった。平均血圧、体温、血液ガスデータは4群間で有意差を認めず、投与後の有意な変動も認めなかった。ICPは全群で投与開始後一過性に軽度上昇する傾向を認めたが、投与終了後は速やかに投与前とほぼ同じ値まで低下した。各群において組織学的にあきらかな異常所見は認めなかった。正常およびSAHモデルラットに対するMg脳槽潅流および水素水静脈内投与の併用療法は、脳圧を含む生理的パラメーターに悪影響を及ぼさないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験では、平成25年度科研費で購入したフリーラジカル測定装置を用いて、SAH後の水素または水素-マグネシウム投与の抗酸化作用を中心に検討していく予定である。 一方、臨床研究では防衛医科大学校での倫理委員会の許可を得ることが出来、また水素水発生装置の準備も完了し、臨床研究が開始できる準備が整った。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回の研究計画は動物実験および臨床研究からなるが、動物実験に関する研究が始まっているが、臨床研究が開始されていないため次年度使用額が生じた。 臨床研究で必要な手術器械を購入する予定である。
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