研究課題/領域番号 |
25462249
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 裕 金沢大学, 医学系, 准教授 (90262568)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 前頭葉 / 頭頂葉 / 連合線維束 / DTI-tractography / 高次脳機能 / 作業記憶 / 浸潤性脳腫瘍 / 覚醒下手術 |
研究概要 |
サルにおける前頭葉と頭頂葉を連絡するネットワークに関しては上縦束(superior longituginal fasciculus; SLF)が代表的な連合線維束として確認されており、SLF I, SLF II, およびSLF IIIの3つのサブコンポーネントが存在することが知られている。ヒト脳においても、前頭葉と頭頂葉を連絡するネットワークに関してサル脳との類似性を示す同様の上縦束のサブコンポーネントの存在が高磁場MRIを用いたDiffusion tenor image (DTI)-tractographyにより支持されている。しかしながら、サル脳とヒト脳との違いから、DTI-tractographyにより示された上縦束に関しては画像上のアーチファクトの可能性も指摘されており、その存在が依然として議論されている。ヒト脳においてはトレーサーを用いた連合線維束の同定が困難であり、屍体脳を用いたfiber dissection法による線維連絡の同定が有力な確認手段となる。しかしながら、現在までヒト屍体脳において前頭葉と頭頂葉を連絡する連合線維束を明確に同定した報告は極めて少ない。 今回、ヒト屍体脳を用いて、fiber dissection法により前頭葉と頭頂葉を直接連絡する連合線維束の同定を試みた。4側の大脳半球を外側面よりdissectionすることにより、上縦束の最外側のコンポーネントであるSLF III, および最内側に存在するSLF Iの詳細な剖出に成功した。特にSLF Iに関してはヒト屍体脳のおける詳細な同定は皆無であり、前頭葉と頭頂葉を連絡する機能ネットワークを検討する上で極めて重要な発見と考えられる。 SLF IとSLF IIIの中間に存在し、両者の線維束との関連性が示唆されるSLF IIに関しては十分な剖出が困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト屍体脳において上縦束のサブコンポーネントであるSLF Iの詳細な剖出同定に成功した。本線維束は前頭葉と頭頂葉を連絡する代表的な連合線維束であり、現在までサル脳においての存在は確認されていたが、ヒト脳においてはDTI-tractographyでは確認されていたが、微小解剖によっての詳細な同定はなされていなかった。本知見は今後の前頭葉と頭頂葉を連絡するネットワークの機能を検討する上で、極めて重要な所見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト生体脳における前頭葉と頭頂葉を連絡するネットワークに関して神経放射線学的検討および脳腫瘍患者での覚醒下手術における機能評価を行う。 前頭葉あるいは頭頂葉に首座を持つ、浸潤性脳腫瘍患者において術前に言語性作業記憶および空間性作業記憶を含む、高次脳機能を詳細に検討するとともに、3T高磁場MRIを用いたDTI-tractographyにより前頭葉と頭頂葉を連絡する連合線維束を同定描出する。 上述した術前の機能および解剖学的評価を踏まえ、覚醒下開頭腫瘍摘出術時に摘出限界の同定に使用する皮質および皮質下電気刺激マッピングを用いることにより、患者の生体脳における言語性作業記憶および空間性作業記憶を含む高次脳機能を直接的な方法で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定に比し、1)肉眼解剖に使用する各種微小脳神経外科手術器具(設備備品)の破損が少なく、補充する必要がなかったため。また、2)生化学実験や肉眼解剖に使用するための各種消耗品が比較的効率的に使用できたため。 上記1)および2)の理由により次年度使用額が生じたと考えられる。 初年度に破損をまぬがれた、肉眼解剖に使用するための各種微小脳神経外科手術器具(設備備品)および各種消耗品の購入に使用する予定。
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