研究実績の概要 |
本年度は、主としてヒト悪性グリオーマ組織を用いた免疫逃避機構の解析を進めた。近年、オプジーボ(一般名:ニボルマブ、抗PD-1抗体)を用いた腫瘍免疫療法が認可され、PD-1, PD-L1を介した免疫逃避機構が注目を浴びている。そこで、当初予定していたTGFβなどの免疫抑制因子以外に、WT1ペプチドワクチン療法におけるPD-1, PD-L1の役割を解析しようと考えた。まずは予備実験としてWT-1非治療の再発・初発の悪性グリオーマ検体切片に対してPD-1, PD-L1, CTLA-4, MDSC, IDO染色を行い、PD-1, PD-L1, CTLA-4については全15症例においてPD-1 positive:5/15、PD-L1 positive :3/15、CTLA-4 positive:4/15という結果となった。PD-1、PD-L1に関しては、これまでの論文報告と比較しても陽性率は同程度であり、免疫染色の信頼性は十分であると判断した。そこで、現在は、WT1ペプチドワクチン療法が施行された患者から採取された検体を用いてPD-1, PD-L1, CTLA-4, MDSC, IDO染色を施行しているところである。 動物実験については、Methionine-, TSPO(Translocator Protein)-PETの解析を継続している。WT1ペプチドワクチン投与後18日の時点で、プラセボ群と比較して腫瘍辺縁部に有意なTSPOの集積増加が確認された。また、WT1ペプチドワクチン投与後25、39日の時点でプラセボ群と比較して腫瘍において有意なMethionineの集積低下が確認された。以上より、WT1ペプチドワクチン療法の効果判定としてMethionine-, TSPO-PETが有用である可能性が考えられる。
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