研究分担者 |
西原 賢在 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20452493)
甲村 英二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30225388)
田中 一寛 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70467661)
水川 克 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80403260)
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研究実績の概要 |
近年発見されたイソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase (IDH))変異はグリオーマ形成の初期に起こることが分かっているが、そのメカニズムについては不明である。多数のマイクロRNA発現異常がグリオーマの腫瘍形成、悪性化に寄与していると考えられているため、IDH変異とマイクロRNA異常との関連性について解析することを計画した。 IDH変異プラスミドをグリオ-マ培養細胞にトランスフェクションして、細胞内代謝物をガスクロマトグラフィー/質量分析器で解析したところ、2ハイドロキシグルタレート(2HG)の著明な上昇とグルタミン酸の低下を認めた。一方、グルタミンとa-ketoglutarate(a-KG)の低下は認めなかった。これらからは、IDH変異によってa-ketoglutarate (a-KG)の2HGへの変換が促進され、それを補充するためにグルタミン酸が消費されていることが示唆された。以上の変化を確認したため、IDH変異プラスミドの安定発現細胞株の作製を試みたが、培養しているうちにプラスミドからIDH変異遺伝子が脱落することがわかり、IDH変異安定細胞株の作製は困難であることが判明した。したがって、転移性グリオーマとmiR発現異常の解析に変更した。転移性グリオーマ22例と転移陰性グリオーマ55例の組織を用いて、miR発現を網羅的に解析したところ、miR-7,miR-29b, miR-34a, miR-101, miR-124, miR-128a, miR-137, mR-218が転移性グリオーマで著明に低下していることが判明した。これらのマイクロRNAを細胞内に導入すると、グリオーマ培養細胞の浸潤能、運動脳が低下した。これらのマイクロRNAが共通に標的とする分子をデータベースで調べたところ、stanniocalcin1(STC1)が候補に上がった。そこで、STC1のグリオーマ組織での発現を解析したところ、転移性グリオーマではSTC1の発現が高いことが判明した。このことから、STC1はグリオーマの転移に関連する分子であると考えられた。
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