研究課題/領域番号 |
25462263
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野村 貞宏 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20343296)
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研究分担者 |
白尾 敏之 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448281)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 正常圧水頭症 / 高血圧 |
研究概要 |
特発性正常圧水頭症(iNPH)の原因仮説として、従来の髄液吸収障害説に代わり、脳室内髄液拍動増強説がある。脈絡叢の拍動が脳室を拡大させるならば、高血圧と高脂血症が水頭症のリスクファクターになると考えられる。この証明のため、当科で2002年から2013年に治療を行った特発性正常圧水頭症患者25名(平均年齢71.9歳、男性12名、女性13名)の既往歴を調べた。高血圧保有者は12名(48%)、高脂血症保有者は5名(20%)、両者を保有していたのは4名(16%)であった。これは同年齢における高血圧と高脂血症の平均有病率57.6~73.1%および10.5~17.4%と比較して高くはない割合である。高血圧の有病率と特発性正常圧水頭症の有病率は解離しており、これらの結果からは、特発性正常圧水頭症と高血圧の因果関係は見出せなかった。 頭蓋内圧の脈動と水頭症発生の関係を調べるため、二次性水頭症患者2名(51歳女性、くも膜下出血後および38歳女性、視床神経膠腫)の側脳室圧、第四脳室圧、脊髄くも膜下腔圧を測定した。症例1: 側脳室、第四脳室とも平均圧は9.0 mmHg、脈圧は2.5 mmHgであった。位相差を認めなかった。症例2:側脳室、脊髄くも膜下腔とも平均圧は14.0 mmHg、脈圧は3.0 mmHgであった。くも膜下腔の圧波形は側脳室の圧波形よりも80 msec.遅れていた。心収縮期早期に急上昇する圧波形は脳室に特有のものであり、くも膜下腔には認められなかった。これは動脈の拍動を反映したものと思われ、脳室を拡大させる候補として有力である。ただし脳動脈は脳室内だけでなくくも膜下腔にも存在し、その直径はくも膜下腔にある血管の方が太いことから、動脈の拍動のみではこの現象は生じないともいえ、さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
雄Wistar ratを高張食塩水または高コレステロール食で飼育し、高血圧ラットおよび高脂血症ラットを作成する試みを開始した。その中で水頭症を呈する個体の割合を求める予定であった。設定した条件(8% NaCl、1%コレステロール+1%コール酸、それぞれ12週間)で飼育したラットのうち高血圧を呈した個体がなく、飼育期間、食餌内容を再検討する必要があると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Wistar ratに高血圧と白質傷害を作成して水頭症を発生させる。これまでの検討では高血圧および高脂血症のみで水頭症を呈する個体は稀であることが予想される。何らかの白質傷害を伴う必要があると考えられる。白質傷害を加える方法として、計画調書では放射線照射を提案していた。白質傷害作成法として最もよく行われている頚動脈結紮法では、その後の脈絡叢拍動を強くすることができないからである。26年度は、この考えを改め、まずは頚動脈一時遮断を行って白質傷害の作成を試みる。頚動脈を再開通させれば、脈圧を保ったまま飼育が可能である。白質傷害により脳コンプライアンスが低下した状態で脳室形態の測定を行う。 高血圧、高脂血症作成にはさらに長期の飼育が必要である。特発性正常圧水頭症の発生にもさらに長期を要すると考えられる。飼育期間延長による成果に期待する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットを使用する実験が予定通り進まず、計画を変更する必要が生じた。新しい計画が完成するまで購入できないものがあるため、それらを次年度に購入する予定にした。 実験動物およびその飼育に関する消耗品に充てる。
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