研究課題
悪性グリオーマの予後が極めて不良の原因として、高度な腫瘍浸潤性、放射線抵抗性、抗がん剤耐性と共に、早期に腫瘍再発をきたす高い腫瘍増殖性が挙げられ、これらに共通する腫瘍細胞として、グリオーマ内に潜在するグリオーマ幹細胞が想定される。従って、グリオーマ幹細胞を制御できれば、グリオーマの治療は大きく向上することが期待される。そこで、本研究では、グリオーマ幹細胞を標的とした新規の治療法を確立するため、複数のヒト悪性グリオーマ患者の摘出腫瘍組織から、7種類のグリオーマ幹細胞様細胞株(GIC)をsphere法にて確立し、これらの細胞内のmicroRNAの網羅的解析を行い、正常神経幹細胞と比べ、有意に発現が低下しているmiR-340を新規同定した。miR-340の機能を調べるため、GICにmiR-340を過剰発現させると、GICは増殖、浸潤、遊走が抑制され、マウス脳内での腫瘍形成が見られなくなった。次に、miR-340の直接的な標的遺伝子の探索を行い、PLAT (tissue plasminogen activator)を新規同定した。PLATの発現をshRNAにて阻害すると、miR-340の過剰発現と同様に、GICでは細胞増殖、浸潤、遊走が抑制され、マウス脳内での腫瘍形成も生じなくなった。すなわち、miR-340はグリオーマ幹細胞において、tumor suppressorとして機能し得ることが明らかとなり、ヒト悪性グリオーマ患者に対するmiR-340を用いた核酸医薬療法が有効となることが示唆された。一般に核酸医薬を脳内の腫瘍組織に移送することは難しいが、最近、私達の教室では、集束超音波とマイクロバブルを用いて血液脳関門を開放する方法を開発している。すなわち、ナノバブルをカチオニックリポソームに封入し、miR-340を含有するプラスミッドをこのバブルリポソームに結合させ、血中に投与した後、脳内の腫瘍を標的として集束超音波を照射する計画を立案している
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愛媛医学
巻: 35 ページ: 6-11
Cancer Research
巻: 75 ページ: 1123-1133
10.1158/0008-5472.CAN-14-0938