研究課題/領域番号 |
25462268
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牧野 敬史 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (90381011)
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研究分担者 |
倉津 純一 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20145296)
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30359963)
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
黒田 順一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (90536731)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 悪性脳腫瘍 / 髄芽腫 / 悪性リンパ腫 / ケモカイン / 浸潤 |
研究概要 |
本研究では悪性脳腫瘍において亢進している代謝経路に着目し、関連分子の発現および機能を解析することで、治療抵抗性である悪性脳腫瘍に対して有効な新規治療法の開発を目的にしている。 髄芽腫は、小児に発生する悪性脳腫瘍である。近年、摘出術後に放射線照射および多剤化学療法を併用することで、生存期間の延長がみられている。しかし中には各種治療に抵抗性で、予後不良な症例もある。この腫瘍に対して近年、網羅的な遺伝子解析が行われ、遺伝子発現に基づいたグループ分類がなされている。我々の施設で摘出術および後療法を行った22例に対して、各グループにおける代表的分子に対する抗体を用いて免疫組織染色を行い、日本脳腫瘍病理学会において発表した。今回用いた単一分子の発現だけでは、クリアーカットなグループ分類はできなかった。分子発現と治療反応性に関しての解析を進めている。 脳原発悪性リンパ腫は、腫瘍細胞が脳深部に浸潤することで広範囲に脳を障害し、高度の認知障害等を生じる悪性脳腫瘍である。脳内に生じるケモカインは、腫瘍細胞の浸潤に関与し、細胞内のシグナル分子を活性化することが知られている。そこで我々は、中枢神経系リンパ腫組織において、B細胞リンパ球の遊走に関与するケモカインであるCXCL12およびCXCL13とその受容体の発現を解析した。中枢神経系リンパ腫では脳原発および二次性の脳内浸潤例共に、CXCL12とCXCL13は高発現し、また脳原発リンパ腫ではCXCL12受容体であるCXCR4の発現も高く、一方で脳浸潤を伴わない全身性リンパ腫ではCXCR4の発現がなく、CXCL12/CXCR4がリンパ腫の脳内浸潤に関与する可能性が示唆された。この結果は、日本脳腫瘍学会にて報告した。ケモカインシグナルは細胞内の代謝経路の活性化にも関与している可能性が高く、下流のシグナル分子の発現解析や機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、代謝に関与する分子としてこれまで発現解析を進めてきた IDH1およびFASの機能解析を進める計画であった。機能解析に用いるIDH1変異型発現ベクターの作製等に時間を要しており計画の遅延が見られる。また摘出腫瘍(悪性髄膜腫、悪性リンパ腫など)から、悪性脳腫瘍初代培養細胞株を樹立中である。
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今後の研究の推進方策 |
摘出腫瘍からのIDH1遺伝子の変異を検出する目的で、これまでの変異型IDH1蛋白認識抗体による免疫組織染色に加えて、直接DNAの遺伝子変異を検出できるPCRを用いたパイロシークエンス法を立ち上げる。 摘出脳腫瘍からの、初代培養細胞株の樹立に時間を要する場合には、悪性髄膜腫培養細胞株を購入し、阻害剤を用いたin vitroでの増殖抑制効果を検討する。さらに実験動物の皮膚に培養細胞株を移植した皮下移植モデルを作製し、in vivoでの増殖抑制効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究計画において、網羅的な遺伝子解析および実験動物を用いたin vivo解析まで遂行できなかったので、次年度への繰り越しになった。 摘出サンプルを用いた網羅的な遺伝子または蛋白発現解析を行う。 実験動物を用いたin bivoでの、機能解析または増殖抑制効果の検討を行う。
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